「そう、首を絞めるんだ」

「クビ……」

「おい、手伝ってやれ」




男は顎でお兄さんに命令し
お兄さんは床に倒れこむ俺を無理矢理立たせ




『……お兄、さん………』



腕を後ろに回し動けないように固定した



「あとは任せたぞ」



そう言い残し部屋を出た黒髪の男



『……美雨』

「……コロス…」

『美雨、美雨っ…止まれ、やめてくれ……』

美雨は、アンドロイド。
つまり、機械。






俺の言葉で止まるはずもなく

目の前に彼女が立ち止まる





「……殺す…………クビ…」





ゆっくりと、手が首へ近付く。






『……美雨…………』

目の前にいるのは間違いなく美雨。





この顔は俺が一目惚れした顔で
この口は俺がキスをした口で
この体は俺が抱きしめた体で


アンドロイドでも好きなもんは好きなんだ
好きな人がアンドロイドだっただけ。





ただそれだけ。






なのに、俺は好きな人に殺されるのか










『…………美雨』



声にならない声でそう呟くと、











一瞬、ピクッと彼女の体が揺れた。












けどまた、我に返ったように首へ手を回そうとする


もう一度





『……美雨?』




彼女の手の動きが止まる




『美雨』




もう一度呼ぶと 上目遣いでこちらを見つめる




『ねぇ、』



俺がそう言うと










"……なに"



なんて返事をしてくれた。



『好き』


「……………………」








やっぱりダメか。


彼女の手が動いた瞬間にそう思った。






『俺、死ぬのか……』












「…………ごめんね」






『…え?……美雨?』





「…………も」





『え?』





今にも消えそうな声で




















「……私も、好き。」






確かに彼女は、優しく微笑みながらこう言った。


















『……ほん、とう?』

「…………ごめんね、慶ちゃん」




美雨が





……泣いた。









彼女の目からはぽろぽろと雫が滴り落ちる。




「……なに、この水…」

『……泣いてるんだよ、美雨。』

「…俺もお前を殺すことは出来ない」





後ろにいたお兄さんが
そう呟き

固定していた俺の腕を離す




『……え?お兄さん?』

「涙って、私にも出せるんだ……」





驚いたような、喜んでいるような声のトーン。







「俺達には感情がない、
そう言われて今まで過ごしてきた」

「……あの、加藤先生にね」

「でも、お前を殺せと命令された時初めて」



二人は目を合わせ



「……うん、私も」

「加藤先生の言うことが聞けないって勝手に判断してた」

『……え?それはつまり…』

「私達にも、心が出来たの……」

「先生に逆らうなんて初めてだわ……」

「……これからどうしよう、お兄ちゃん」

「じきに先生が戻ってくる。戻ってきた瞬間を狙うしかない。」







______
____



加藤side





……そろそろあの男が死んだ頃だろう。
コーヒー飲み終え、2階へ上がる。

ドアを開くと、そこには

呆然と立ち尽くした
N-02とN-03の姿。



……と床に横たわる小山慶一郎。




「よくやってくれたな、もう寝てていいぞ。」



素直に言うことをきく、俺の可愛い子たち。



「……ふっ、くっく…」



こみ上げてきた笑いが止まらない。
俺は天才だと思う。我ながら。




人型のロボットを二体もつくり
しかも片方は感情が芽生えた。

先日、記憶を消す機械も作ってみた。
レーザー光線タイプのもの。
……あ、こっちを小山慶一郎に使えばよかったな。

まあいいか、もう死んでるし



「……今日のレポートは長くなりそうだな…」



パソコンと向き合い、文字を打っていると

人の影が画面に反射していて


____気付いた時にはもう、遅かった。



「……う、あぁっ!」



何かに体が包まれ、変な感覚に陥り、俺は意識を失った。












目が覚めた時にはもう、五年という月日が流れていた。















小山side




……まさかこんなに上手くいくなんて。

目の前に横たわる、白衣の男。
俺の手には、記憶を消す機械……


消す範囲は、5年らしい。

ふと目覚めると、いつの間にか5年経ってるなんて……恐ろしい…





『……これで、よかったの?』

「…うん、いいの。大丈夫。」

「……これからどうしよう。」




そうか、2人には家がない。
パソコンもない。壊れると、おしまいだ。




『……俺一人暮らしですけど、うちきます?』

「……いんや、俺彼女いるから」

『「……え?」』

「え?!お兄ちゃん彼女いたの?!」

「は?いたら悪ぃの?(笑)」

『アンドロイドなのに?!』

「おいそれ関係ねえだろ(笑)」

『いやありますよ!!!!』

「……まぁ、彼女もアンドロイドだから」

『「…………は?え?」』

「2人とも仲良すぎじゃない?(笑)」





お腹を押さえ くくくっ、なんて笑うお兄さん。




『えっ、今時みんなロボットなんですか?え?待って怖い何も信用出来ない』

「…………怖いもう無理だ私も何も信用出来ない」

『…………自分もロボットのくせに』

「ふはっ(笑)(笑)間違いないね、小山くん(笑)

ってことで俺は、その子のところ行くから。
もし壊れてもその子の先生がなんとかしてくれるよ〜」




なんて言って
お兄さんはさっさと荷物をまとめ、出ていってしまった。


ポカンと開いた口が閉じなくて。
ただ二人で立ち尽くす。




『…………まぁ、美雨はうちにおいでよ……』

「……うん、そうさせてもらうね………………」




これから、アンドロイドな彼女との同居生活が始まります。
















______
____




〜10年後〜



"それでは本日のニュースです"


テレビから聞こえるアナウンサーさんの声。



「慶ちゃん早く〜!祐也達の結婚式なのに!!!
遅刻するよ!!」



"今や人口の3分の1はアンドロイドになったということで"



『待って待って!今ニュースでアンドロイドがなんちゃらって……』



"前々から国で検討されていた案がついに"



「も〜……」



仕方ないなぁ、みたいな顔を見せる彼女。










"アンドロイドと人間の結婚が認められました。"







…………


え?…っ、え?
うそ、本当に?!





『……えっ、今…結婚って…』




「…………ほ、本当?!」



『うん、だってここに書いてあ…「やったぁ!!!!慶ちゃん!!!ねぇ!結婚できるんだよ私たち!!!」











人口の3分の1もいるアンドロイド。
だけど、涙を流すアンドロイドなんて、他にいるのかな?



「け、ちゃっ……私、また泣いてる…」



……もらい泣きしちゃったよ




『…ずっと、この日が来るの待ってた。』

「うん、私も……」

『ねぇ、美雨』

「はい、慶ちゃん」

『俺と、結婚してください____』















涙を流した彼女はそっと……

頷いてくれた。







________俺の彼女は××で





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