チョロ松の場合
「咲良ちゃん?」
本屋で立ち読みしていると、チョロ松くんに会った。
「チョロ松くんだ、本屋で会うなんて珍しいね」
「本当ぐ、偶然だね!」
偶然…ではない、実は。チョロ松くんの御用達の本屋だってことを知っているからこそ、わたしはここにいる。せっかくのクリスマスイブ、チョロ松くんに会いたい一心で。
店内にはもうすぐ閉店のアナウンスが流れていて、わたしは本を閉じた。チョロ松くんはアイドル雑誌のところにいて、何かを探しているらしい。
「何か探しているの?」
チョロ松くんの後ろに立って、手元を覗き込むようにすると、チョロ松くんは慌てて手を引っ込めた。
「な、なにもないよ!なにも…!」
「そうお?もう閉店だし、わたし帰るね」
ほんとは先に帰るふりをして、逆にチョロ松くんが帰るのを影で見送ってから帰るつもりなんだけどね。
じゃあ、と入り口へ向かって歩くこと1、2歩。
「あ、ま、待って」
と腕を掴まれた。
びくん!と心臓が跳ねる。チョロ松くんがわたしに触れている!!?何々、何のサプライズですか神様!
「咲良ちゃん、さえ、よかったら僕と、その」
早くその先を言ってくれないと、わたしの心臓が爆発してしまいますチョロ松くん!!
「僕とデートしてください!!」
突然店内に響き渡るくらいの大きな声で叫ばれて、わたしの頭は真っ白。周りの目線がわたしとチョロ松くんに突き刺さる。
我に帰ったわたしはいたたまれなくなって、
「チョロ松くん走ろう!!」
「えっ、ええっ!?」
まさかチョロ松くんを置いてけぼりにするわけにも行かず、腕を掴まれたそのまま、クリスマスイブの街に飛び出した。
恥ずかしい気持ちでいっぱいだったけど、走ってたらなんだか楽しくなってきた。
「はぁ、はあ…」
「はあ、あー、楽しい」
本屋からしばらく走った先の、スタバァの前に二人へたり込んだ。女の子としてははしたないのかもしれないけど、少し大目にみてほしいかな。
「チョロ松くんてば、意外と大胆なんだね」
「いや、ちちちち違うよ!」
慌てて否定するチョロ松くんがとても可愛くて、抱きつきたい衝動に駆られるけど、変に思われたら嫌なのでグッと我慢する。
「今夜、ここで会うなんて、う、運命だと、思ったから…っ」
運命、チョロ松くんの口からそんな言葉が出てくるなんてとにかく驚きしかなくて、心臓の音がさっきからうるさくてたまらない。
「い、いや、運命っていうか、その、ずっと、咲良ちゃんのこと、今日の花火大会、誘いたかったから…」
花火、そうか。今日はクリスマスの花火大会だった。
ふと思い出した時、花火の音が聞こえ出した。
ヒュー…ドン!
「あっ」
「わあっ」
スタバァの前でへたり込んだまま、チョロ松くんと二人しばらく花火を眺めていたのだった。
チョロ松くんと花火デートなんて、素敵な奇跡ありがとう神様!!わたしもうしんでもいいかも!
「そういえば、さっき何探してたの?」
「うぇっ?!」
チョロ松くんは突然変な叫び声を上げた後、顔を真っ赤にしてしどろもどろになりながら教えてくれたこと。
「咲良ちゃんにいざ会ったら、何話していいかわかんなくて…にゃーちゃんの話題振るのに、にゃーちゃんの載ってる雑誌、探してた…」
でも見つからなくて、わたしが帰ろうとしたからストレートに言うしかなかったらしい。
ねえチョロ松くん、わたし勘違いしちゃいそうだけどいい?
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