予想外の暴走






「……」

ホテルに戻る途中、車に乗ったロイに止められた…どうやら待ち伏せされていた、今エド達がホテルに戻れば軍の護衛が付き身動きが取れなくなるとロイに言われエド達はホテルに戻るのをやめて、ロイの車に乗ることになった…そこで問題になったのが令美で…いつもは助手席を好むのにロイの隣はイヤだキモいだの文句を言う令美を説得して後部座席に乗せた…ロイは死んでいた

「あのホムンクルスはどうなった?」
「…郊外の空家に収容した、中尉から連絡があった今からそこへ行く」
『今回の作戦で手に入れたあの何でも食べるデブ』か…と令美はエド達の話を聞き流しながら思い出す
「尾行て来る奴がいないか後ろ見ててくれ」
「へいへい…まだ治りきってないだろ運転して大丈夫なのか?」
ロイが大怪我したのは数日前で勿論癒えてない、今回の作戦も怪我のせいでロイは裏方で活躍していた
「動かせる駒が少ないのでな…自分で動くしかないだろう」
「仲間少ねーのな人望無ぇんじゃねーの?」
「君に言われたくないな…」

「ねぇ…そんなことより早く車から降りたいんだけど、まだ?」

『……』

「……途中で一人拾っていく…」


ロイとエドの会話が不愉快に感じた令美からの冷たい言葉に車内は鎮まりかえった





     [ 予想外の暴走 ]




途中でロイの知り合いの医者を乗せてよくやく車は空家へついた、そこには捕虜のホムンクルスと腕一本無いライファンがいた、すぐに医者の治療が始まった

「…すまん」
治療中なため空家には入らないエド達は外で座り込んでるリンに謝る言葉しか口にできなかった

「『オレ達が巻き込んだ』ってカ?

なんて顔してんダ勘ちがいすんなヨ共同戦線だと言ったはずダ話を持ち掛けたのはこっちだし単なる利害一致で協力したんだから君達が気に悩む必要は少しも無イ不老不死なんて求めるからにはそれなりの犠牲は覚悟して国を出て来ていル」

エドの謝罪にリンは彼らに自分達の覚悟を示したはずだが、その言葉にリン自身も改めて気付かされる
「…そうダ…一族の運命を背負うからには覚悟してたはずダ…

覚悟が足りなかっタ…甘かっタ…俺よりもライファンの方が覚悟があっタ…」

「確かに、あんためっちゃ動揺してたもんね」
「…それは言わないデ…レイミちゃん…」
絶賛反省中のリンに対してまたもや厳しく冷たい発言する令美は鬼である…

治療が一段落するとエド達だけがライファンの元へ…治療のお陰で命に問題はもうない

「あのバカ王子守れてよかったね、ついでに死なずにすんだ」
「…若をバカと言うな…」
「ツッコミとこそこじゃないから」
リンの時みたいに気まずそうな兄弟とは違い令美が軽々しく軽率な事言うが怪我もありライファンはそんなに怒りはしない…というかエド達には二人が少し仲良く見れる

「…大丈夫?」
「何かオレ達にできる事あるか?」
令美のお陰で気まずさがありながらもエドとアルが話かける、腕を無くしたライファンはオートメイルをエドに頼んだ、最高に腕のいい技師を紹介すると約束をした…




「おいなんだこれは…」
「『グラトニー』とよばれるホムンクルスだ」
ライファンとは別室に捕虜されているグラトニーを観察しながらリンとロイが話あっている中に医者として連れてこられたおじさんがグラトニーを見てすぐに普通の人間でないと分かった
「気をつけろ賢者の石が肉体にあるから簡単に死なんぞ…殺し続ければ死ぬがな…」
「俺は頭悪いのか?お前さんが狂ってんのか?」
「どちらでもない」
簡単に理解できないロイ達の話におじさんはついていけない

「複数の生きた人間を犠牲にして作られるという賢者の石、そしてその石の核に作られた化物…それがホムンクルスだ…

更にどうやらこいつらは軍上層部の一部と繋がりがあるらしい…マース・ヒューズが軍の暗部に気付いたらしくてな、こいつらに殺された」
「本当か⁉︎」
ライファンと話終わったエド達もロイ達の話を聞くため近づけば、ヒューズの死について医者のおじさんが食い付く、医者はロイの知り合いだからヒューズとも関係があった…

「上層部だト⁉︎それどころじゃないゾ‼︎」
「何⁉︎」
ロイの仮説にリンが止めた

 「…キング・ブラットレイ…

   あいつもホムンクルスの可能性があル!」


        『 …は? 』


リンの予想を上回る情報に令美以外の4人がマヌケな顔して止まる
「眼帯の下…眼球に奴らのマークがあっタ!グラトニーと一緒になって俺達を追い詰めタ!」
「バカな!」
「この国のトップがホムンクルス⁉︎」
理解出来ず、混乱してるエド達を他所に、リンは深いため息を吐いた…それはエド達に呆れてるんじゃなくてキング・ブラットレイとの戦いを思い出して自分の身があることに安堵したものだった

「…あの時レイミちゃんが来てくれなかったら危なかったヨ…はっきり言ってライファンも俺も生きてるのが不思議なくらい…強かっタ…」
事前にエドとアルには令美がドッペルゲンガーのアリスでリンの手助けをすると説明をされてたのでそこに驚きはない…けど大統領の事はまったく聞いてない

「おい、レイミ!なんでそんな大事な事言わなかったんだよ‼︎」
「…言うの忘れてた…ダブリスの時から知ってたから」
「えぇ⁉︎」
コソコソと文句言うエドに令美は素直に返事した、本当に純粋に忘れていて、しかも師匠イズミのいるダブリスで大統領に会った時から知っていたのだから兄弟は驚く

「…まぁダブリスの時は言ったところで信じてもらえないと思ってたから…」

「…」
確かにあの時のエド達には令美の話を信じることはできなかったはずだ

「…っ〜!確かにあん時大統領のこと言われてもオレは信じなかった!

でもな‼︎今度からは何でも言えよ‼︎重要な事は得に‼︎

      …絶対信じてやるから‼︎」

「…兄さん…うん!僕も信じます‼︎」

コソコソと話してるとは思えないぐらいの熱量のある言葉が令美にかけられる…大統領の事を言わなかった言い訳をただ言ったつもりの令美は兄弟からそんな言葉が返ってくるとは思わなかった


    「…わかった…ちゃんと話す…」



       ◇◆◇◆◇◆




「グラトニーの中にはたしかに人ならざる人の気配があるのにブラットレイにはそれがなイ…

あきらかに人間の気配と一緒なんダ」

何の目的で人間のフリをしてるのか、家庭を持つブラットレイに家族が気づかないのか疑問が多くある中でリン達だけが感じる気配だけが唯一のてがかりだった…

エドが令美を見る、ブラットレイについて何か詳しい情報がないか求めているが、リンがブラットレイが人間の気配の気配と一緒だと言っても令美からしたら心が読めない相手、令美はリン同様それ以上の収穫はないので首を横にふって返事する

「書物によればホムンクルスは生殖能力の無い生命体とされてるけど…大統領には子供がいるでしょ?」
「あぁ…その息子のセリムは養子だ、大統領にはその血をわけた実子がいない」
大統領がホムンクルス疑惑を否定も肯定も出来なくなったエド達はみんな黙ってしまう

「は‼︎化物か人か…なんにせよ大統領の椅子から引きずり下ろしやすくなったな!」

その中で唯一高々と笑ったのは大統領になる野心があるロイだった…その雰囲気のおかげで話はグラトニーに戻り、一つしかないホムンクルスをどうするか…もちろん取り合いになった…作戦前からちゃんと話合っとけばいいのに…と令美はバカにした目で三人を見る

「あーもう話について行けねぇマスタングさんよ俺ぁ帰らせてもらうぞ」
「私も心底どうでもいいから休むね」
いわば部外者の医者と令美が話し合いから抜けようとしたらロイは医者をエドは令美を止めようとした…グラトニーの権利を多数決で決めるかもしれないから保険に…

「?」

「ラストころした…ラスト…」

その時…グラトニーの方から声が聞こえて令美は振り返った…今まで大人しかったグラトニーの様子が変わった

「何?」
「おい、どーした…」



      「ロイ・マスタング‼︎」



普通の人間ではあり得ない光景ー

  グラトニーのお腹が裂けて…眼が出てきた

    眼が合った瞬間…家の半分は


        『食われた』



◇◆◇◆



「…何アレ…キモ」

急な暴走状態になり、そこらじゅう無作為に食い尽くしていくグラトニー

目的はロイだとハッキリ分かり、すぐさまエド達が囮を立てて取り敢えず森の奥まで誘導した…令美は手伝ってない気持ち悪い相手はしたくないから

「早くしろボウズ‼︎逃げるんだよ‼︎」
運がいいことに車は無事で、医者が皆んなに車に乗るよう急かす、後部座席には負傷してるライファンをリンが乗せた
「街に連れてきゃもう少しまともな治療が出来る‼︎さっさとここを出るぞ!冗談じゃねぇ!俺は一般人だぞ!こんな訳わかんねー闘いに巻き込まれて死んでたまるか!」

「後もう少し待って」
「あぁ⁉︎」
今すぐにでも逃げ出しそうな医者を止めたのは令美だった、気が立って顔が怖いおじさん相手に臆することなく令美は冷静に止める
「まだ来てないでしょ、あいつらが」



程なくしてエドとアル…それに狙われてるロイもリサに支えられながらやってきた、グラトニーは上手く偽物の人形に引っかかってくれて森の奥で暴れてる
「すみません、遅くなりました」
「大丈夫」
アルが令美に声かけてる中、エドはロイを無理やり車に乗せた

「なっ…この状況でのこのこ帰れと言うのか‼︎」
「足手まといだ‼︎」
「返って‼︎」
まだ前の傷が治ってないロイを車に乗せるつもりでこの車を止めていたのにロイは残る気でいたのでエド達がキッパリと本気の言葉を言った令美の目も『無能』だと語っていて…ロイの頭にはキノコが生えて暗くなる
「…っとにこのボケ大佐はよ…てめーはてめーの仕事しろ軍のトップがホムンクルスだなんて放っとける問題じゃねーだろ?」

「たらたら喋ってるヒマはねぇ‼︎おまえらも早く乗れ‼︎」

「…満席だろ…行ってくれ」

車に乗れるのは4人、もうすでに満席の状態でエド達は乗る事を拒否した…子供だけを残すのは危険だとリサ達は言うがエドは軍上層部を相手するよりもグラトニーから情報を得る方が適任だと言う

「…子供だからとかそんなの関係ねぇ、今回の作戦の言い出しっぺはオレらだ自分のケツは自分で拭かなきゃならねぇよ…

ここまで手を貸してくれてありがとな」

子供のエドからそんな言葉を言われては大人のロイ達は止めることがもう出来ない

「だが流石に嬢ちゃんを残すことは出来ねぇだろ!」
「必要ない、ここの誰よりも強いし死ぬ可能性が低いから…それにおじさんと一緒の車にもう乗りたくないから」
おじさん2人のダメージは計り知れないくらい大きい爆弾を投入した令美に誰も何も言えない






        ◇◆◇◆◇◆



「…そんなのエドが使いこなせるとは思わないけど…」

ロイ達と別れ、暴れ回るグラトニーの元へ向かう中、令美は先ほどリザに命を守る為にとエドに渡した銃の事を言う、軍人だとしてもいつも格闘技か錬金術頼りのエドが銃を使いこなせないことは令美にも分かっていた

「そんなこと言われなくてもわかってるよ!…けどしゃーないだろ‼︎」
人を殺す道具ではなく自分の命を守るために銃を借りたエドの心の真っ直ぐさに令美は目を逸らす
「…扱い方間違えて私を殺さないでね」
「殺すかよ‼︎」



『ロイ・マスタングはどこだ‼︎よくもラストを‼︎‼︎許さんぞぉぉぉ‼︎‼︎』

「…闘うって言っちゃったけどぶっちゃけおっかねぇ…‼︎」
「口調変わってるゾ」
「キャラ変じゃん」
無差別に森を飲み込み暴れるグラトニーを巻き込まれない場所で様子を伺うエド達は作戦会議中

「どうやって捕まえる?せめておとなしかった元の形に戻ってくれりゃいいんだけどねぇ…」
「こうなった原因はあの無能オヤジのせい」
「じゃあレイミちゃん、あの大佐を腹に放り込んだらおとなしくなるんじゃないかナ?」
「いいアイディアだせリン!」
作戦会議ぐまともに出来ないほどの、ぶっ飛んでるグラトニーの攻撃にエド達は慌てて逃げ出す

「だいたい飲み込んだ質量はどこに行ってんだよ‼︎」
「知るカ!ホムンクルスってのは錬金術の分野だろウ‼︎」
「あぁもう埒があかない‼︎」
「どいつもこいつも無能ばっかり」
非科学的すぎて怒り出すエドに答えをくれる者はいなく…ロイ達の前であれほどの大口を叩いておきながら今情けない姿に令美の瞳が冷たくなる



アカシ-Tsukimi