・死ネタ風味です
「ひより!おいひより!」
俺は必死で腕の中の女子に声を掛けた。
辺りに見えるのは屍。どこもかしこも、ひよりが殺した敵の残骸だらけだ。
「小十郎、様……政宗様、は?」
「政宗様は無事だ。当たり前だろ!」
「そうか、良かった……です」
「おい、しっかりしやがれ!」
「私……小十郎様にお仕えして良かった」
「もう喋るな!」
彼女の生気が弱くなっていくのを感じた。
早く連れて帰らねば、待つのは暗く深い常しえの闇の中だ。
──昔、畑に倒れている人影があった。
血に塗れて、刃こぼれした刀を片手に、うつ伏せで倒れている少女。
農民に聞けば、悲しそうに語ってくれた。
『この子は村を守って下さる少女でございます。放浪癖があるようで、あちこちに出掛けては賊を追い払う、村の守り神でございます。そんな御方が……一体どうして……』
剣の腕は確かだと、怪我の具合から見て取れた。浅く狭い傷。だが二カ所だけ、深く抉られるような傷があった。これが彼女を地に伏せさせる原因だ。
興味を持ち、連れて帰る事にした。
治療を施し、数日経た後に起きた少女は、静かに俺の目を見据え、俺が名乗り終えると同時にこう言った。
『私の名はひよりと申します。私の恩人 片倉小十郎様、貴方の為なら敵の血を浴びて死ぬる覚悟を決します。私のお仕えする御方は、小十郎様、貴方です──
「小十郎様……貴方の為なら……敵の血を浴びて死んでも、悔いは、ありません」
「ひより、やめろ。絶対に連れて帰ってやる」
「だからどうか、貴方の、腕の中で死なせて下さい……お願いです、私の……一生のお願い、です」
「安心しやがれ、死んでも離しやしねェ」
俺は離れないようにしっかりひよりを抱き締めた。だから死ぬなと、念を込めて。
「暖かい、ですね」
「馬鹿野郎……」
今、この瞬間が彼女の最期に近付いてるなんて
(部屋に帰ったら)(しっかり説教してやるからな)
2010/05
2012/02/14編集