冬の寒さが身に染みる頃、ひよりは元親の隣に座って、慣れない電車に揺られていた。そっと窓の外を見遣れば、朝日がすっかり昇りきっていて、元親の銀髪を煌めかせている。
綺麗、と思わず呟いてはにかめば、吊られて元親も笑った。
「どこに行きてぇ?」
いつものデートの感覚で尋ねられる。足下のボストンとスーツケースはその"いつも"を否定するのだけれど。
ひよりは少しの間元親をじっと見上げるようにして見つめていたが、不意にその左目に触れて、そっと笑った。
「元親の傍に居られるのなら、どこだって良いよ」
嘘偽りなく、無垢な心で告げられた言葉に、元親は隻眼を細め、頭をわしゃわしゃと撫でた。
「当たり前ェだろうが」
その笑みはまるで今から悪戯をするような程に楽しげで、自分達の行く先を案じているようには見えない物だった。それでも彼は必死にひよりと己が食いっぱぐれないようにと考えを巡らせ、常に崖っぷちの中で生きていく事を決心してくれた。
ひよりの我が儘に、付き合ってくれた。
「…ありがとう、元親」
ひよりはその腕にしがみついて、温もりに安心しながらそっと呟いた。
今から楽園に行くのです
(君が居るのなら)(何も恐くなんかない)
2011/11/21
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駆け落ち的な?何か不完全燃焼