「?」
「好きです、遠呂智様」
遠呂智様の広い胸に寄り添って、私は思ったままを口にした。いつか訪れる別れは絶対だから、出来る限り遠呂智様と共に日々を過ごして、想いを伝えるようにしている。きっと、幾千の想いを口にしても、幾多の時を過ごしても、足りなくてどうしようも無いのだろうけれど。
「……フン」
「大好きです、とっても」
――何故。全てを捨てるのを躊躇う余地も無い程、遠呂智様に惹かれたのか。私にも、よく分からない。遠呂智様と私は、表裏一体とも言える力を宿していて、だから共にいると心地好いのだ、というような事を遠呂智様が仰っていたけれど。
「お慕いしています、心から」
左右で違う色を宿した遠呂智様の鋭い瞳を覗き込む。珍しく、遠呂智様自ら手を伸ばして私の頬を撫でた。冷たいとさえ思える大きな手のひらが、壊れ物を扱うかのようにぎこちなく動く。その緩慢な動きが擽ったくて、私は小さく首を竦めた。
「後は、何よりも……」
「愛している」
「……っ、お、ろちさま」
私の言葉を繋ぐように、遠呂智様は何気ない様子で呟かれた。遠呂智様からそんな、確かな響きを持った言葉を頂いた事が無かったから、私はひどく動揺してしまった。どうしよう。いつもは暗い光しか湛えていない遠呂智様の瞳が、どちらもじりじりとした熱を孕んでいる。私を、捉えて離さない。
「我にここまで言わせたのは、貴様のみだ。ナマエ」
「遠呂智様……」
「……言葉にすれば、安く響くな」
貴様の言葉は、そうでは無いのに。そう言って遠呂智様は緩やかに自虐を含んだ笑みを浮かべた。そんなこと、あるはず無いでしょう。いつも言葉にせず、行動に起こさず、全てを自らの内に溜め込んでしまう遠呂智様の言や仕草こそ、私の心を満たしていくもの。
「光栄です、遠呂智様」
嬉しいのに、幸せな筈なのに。きんとした切なさとが私を苛むから。私はそっと、遠呂智様に接吻を落とした。
その言葉ひとつで生きていられた
でも、お願い、もう少し共に
拙宅の切なさ担当遠呂智様でした。すみません、書きやすくてどうしたら良いですか。
遠呂智様は基本的に受け身で自分から動こうとはしません。逆に、対の存在設定なヒロインは積極的。じんわり攻め主っぽいのが書けるのも楽しかったりします。
拍手用としてかなり前に書いた産物でした。
title thanks:君は透明なままで
2011/11/28
天倉