無双/風魔小太郎
(風待花ヒロイン)
うぬにやろう、と渡されたなかなかに重い袋の中を覗いてみると、艶やかな赤い実が沢山詰まっていた。
「どうしたんですか、この林檎」
「採ってきた」
「そうですか。…剥きます?」
こくりと鷹揚に頷き、早くしろといわんばかりに縁側へと寝そべるこの大男が、風魔忍軍の頭領だと誰が思うだろうか。傲慢で気の向くままのように見えて、実は結構働き者の小太郎さんだから、これくらいの休憩は許してあげるとしよう。携帯している小刀を取り出して、赤い実を一つ剥き始める。
「……クク、随分上から目線の考えだな」
「あ、勝手に読まないでくださいよ…!」
「うぬは分かり易い故」
「全くも……っ!」
「……!」
手慣れた動作だからと油断したからか、小太郎さんに集中力を乱されたからか、指先を軽く切ってしまった。林檎の如き赤い血がじわりと滲む。
「うぬはど阿呆か」
「それ、お館様の……」
「軽口は良い。まずは止血だ」
小太郎さんの所為で怪我をしました、なんて茶化そうと思ったのに。珍しく真剣な表情で私の指を見ると、襟巻きの端をびり、と破いて指の根元を縛る。そして、ぽかんとしている私の指をぱくり、と口に含んだ。
「小太郎さ……」
「……」
「……っぁ」
体温は低い癖に、舌だけは熱い。血を舐めとるように、傷口を労るように、舌が蠢く。小さな痛みと、それとは明らかに違う何かに、声を上げそうになってしまう。最後にぺろりと舐め上げて、小太郎さんは漸く指を解放してくれた。
「止まったな」
「…あ、ありがとうございます」
「クク、ただの治療だというのに、やけに顔が赤いな、ナマエ?」
「こ、小太郎さんの髪色には負けます!」
頬をゆるり撫でられて、思わずびくりと反応してしまった自分が恨めしい。皮むきを再開したものの、何だか妙に上機嫌な小太郎さんが癪に障る。いつも言いくるめられてばかりだ。
「……そう言えば、我の髪が綺麗と申していたな」
「そう思いますよ、珍しいけれど。後、瞳の色も綺麗ですよね、小太郎さんて」
林檎が熟していない時の鮮やかな緑色、とでも表現しておこうか。鋭い蛇の如き瞳は、色も相まって吸い寄せられるようで。美しい、とまで言ったら大袈裟かもしれないけれど。私が林檎を剥き終えても、小太郎さんは押し黙ったままで。
「小太郎さん…?」
「………うぬは真のど阿呆のようだな」
「私はど阿呆じゃ…!」
ふい、と背けられた顔を覗き込んでみると、青白い顔だから分かりにくいけれど、僅かに、微かに、でも確かに、頬が紅潮していた。まさか、まさかまさか、小太郎さんが、………照れてる…?
「…煩い」
「何も言ってないでしょう!」
「興醒めだ」
ふ、っと瞬く間に姿を消してしまった小太郎さんだけど、所謂照れ隠しなんだろうと思うと可笑しさがこみ上げてきた。折角貴方の為に剥いたのに、と少し残念に思いながら林檎を頬張る。甘くて、少し酸っぱくて、自然と顔が綻んだ。
さっさとあなたのものにして
あなた色に染まりつつあるの
拍手用に書いて放置してたお話その一。
拙宅の風魔にしては珍しくデレましたよ奥さん!←
ストレートな褒め方に弱いと良いですよね、あと指舐めって良いですよね!!
現代の林檎は戦国時代には無かったらしいけどまぁそこはご愛嬌。
というか林檎ネタ好きなのは、出身が林檎の産地だからです。
title thanks:魔女のおはなし
2013/01/12
天倉