甄姫様に呼び出された。何かと思えば彼女の選りすぐりの女官達に、髪の一筋から足の爪まで丁寧にぴかぴかにされた。「貴女は元が良いのだから」と絶世の美女に妖艶に微笑まれても、はぁ、としか言いようがない。しかしなすがまま肌触りの良い衣服まで着せられて、軽い化粧も施され。殿方に反応を伺ってみなさい、と放り出された。
(…何だか居心地悪い…)
周りからの視線が痛い気がするし、体の線が出てしまう形の服だから気恥ずかしい。甄姫様には悪いけれど着替えよう、と足早に部屋へ戻ろうとした私の名を、聞き覚えのある声が呼び止めた。
「やはり、貴女でしたか」
「張遼殿?」
「あの綺麗な女人は誰か、と皆が噂しておりました。いやはや、戦場での凛々しい姿も様になるが、今の可憐な格好もよくお似合いですな」
「…はぁ、ありがとうございます」
お世辞だろうけれど褒められたからにはお礼は述べておく。ぺこりと頭を下げて失礼しようとすると、張遼殿にやんわり腕を掴まれた。
「お待ちくだされ、ナマエ殿」
「あの、まだ何か…?」
「もう少し、貴女と過ごしたいのです。お時間を頂けるかな」
「着替えてからでは…」
「それでは困りますな。…失礼」
「え、ちょっ…」
抗う間もなくひょい、と抱き上げられてしまった。女ながら私も鍛えている身、こんなに軽々と運ばれるとは…と少し悲しくなる。というか、何故こんな事に。そんな私の混乱と周りのざわめきを気にする様子もなく、張遼殿はすたすたと歩き出した。
「何処に行くのです」
「私の自室ですが」
「何故です」
「野暮な事を聞きますな。それとも、口頭で説明した方が宜しいか」
「……えっと、その。人違いでは」
甘やかな囁きに揺らぎそうになる。私と将軍はそんな深い仲ではなかった筈だ。おろおろしている間に彼の部屋へと辿り着き、寝台にぽふんと下ろされた。呆気なく押し倒されて、顔が近付いて。
「だ、めです。まだ…」
「まだ?私は待ちましたぞ。けれど貴女は全く気付いてくれない」
「なら、ちゃんと好きって言って下さい…!」
「…言っておりませんでしたかな」
「言葉にしてくれないと分かりません。…私は疎いから」
じっと見つめて彼の言葉を待つ。張遼殿は目を細めた後、私の手を取って。
「……貴女を心より愛しております、ナマエ殿」
「…!」
「これで宜しいかな?」
綺麗に整えられた爪先に口付けられた。…嗚呼、困った恥ずかしい。赤くなった私の頬を撫で、段取りを踏むことに致しましょう、なんて彼はどこか楽しそうに呟いた。
爪がかわいい微笑みをうつしてる
綺麗になるのも良いかも、しれない
拍手放置文その二。
三國無双7発売決定記念にやま…久々の張遼殿でした。
アンケにあった「変態紳士な話」を目指したつもりが…どっちつかずに。
またその内リベンジしたいと思います。
title thanks:魔女のおはなし
2013/01/12
天倉