「はぁ……」
「どうしたんだよ、溜め息なんかついて」
「仲権…私、恋がしたい」
「ふはっ」
我慢ならない、といった様子で吹き出した仲権は、暫くお腹を抱えていた。失礼な奴め、と弱い脇腹を小突くと更に笑い転げる。私、そんなに面白い事言ったかしら。
「ひー、あー、笑った笑った…」
「もう、こっちは真剣なんだからね!」
「分かってるよ、でもさ。お前がねぇ…」
「女っ気が足りないとでも言うの?」
「いやいやいや、充分可愛いと思うけど」
くしゃりと私の髪をかき混ぜて、仲権は爽やかに笑った。この幼なじみは大抵これで誤魔化そうとするんだから。ありがと、とぞんざいに感謝しつつもむくれていると、息子よー!と気さくな声が聞こえた。
「お前さんらは相変わらず仲良いなぁ」
「父さんよく分かってる!」
「な、仲良くないです!」
「お?喧嘩でもしたか。ナマエちゃんは可愛いんだから息子が譲ってやれよ?」
「可愛くもないです!」
そんなことねぇだろ?となぁ、と仲権の背をばしんと叩く。両成敗、とでも言うように、仲権のお父さん、夏侯淵さんはわしゃわしゃと私達の頭を撫でた。あ、豪快だけど仲権と似てる撫で方。似てないってよく言われてる二人だけど、私はそんな事ないと思う。笑い方とか、見た目に似合わず気配り上手な所とか、似てるもの。
「あ、そうだ父さん。ナマエが恋したいんだって」
「何で言うのよ仲権!」
「わははは、恋とは驚いたな。嬢ちゃんもそんな歳になったか…」
「む、恋くらいしますよ。誰か居ませんか、強くて優しくて格好良くて頼りになって…」
「随分欲張るなー」
…あと余計な一言を言わない人。張遼将軍とか徐晃将軍とか理想に近そうな気がする。でも二人とも私みたいな小娘に見向きしなさそうだ。親しみやすいっていうのも追加かな。果たして魏軍にそんな人いるだろうか。と考え込む私をよそに、二人はあっけらかんと。
「父さんが適任じゃない?」
「息子が適任じゃねぇか?」
「いやいやいや、ナマエは俺を何とも思ってないって!」
「いやいやいやいや、若い者同士の方が似合うだろ!」
(やっぱり似てるなぁ)
似たような事を言い合っている二人を眺めるのは日常茶飯事だ。流石親子というべきか。…恋って出来るものじゃなくて、してしまうものだと曹操様が仰っていたけど(そして夏侯惇さんに怒られていたけど)。仲権に、夏侯淵さんか。身近過ぎて考えたことなかったけど…と意識してしまうと、何だか頬が妙に熱くなる。
「ナマエ?大丈夫か?」
「顔赤いじゃねえか、どら、医務室いくぞ!」
「だ、大丈夫で…ひゃあ…っ!!」
「父さん無理すんなよ!」
「いんや、全然無理じゃねえぞ息子!」
心配性な夏侯淵さんに抱きかかえられ、その後をついてくる仲権という騒がしい一行は、お陰様で魏軍の笑い話の一つになってしまったのだった。
私の好きなひと、この指先とまれ
まだかくれんぼの途中
あんけか拍手にあった(曖昧←)「覇ニーじゃなくて淵ちゃんに惚れる」話にしようと思ったのにほのぼのになってしまいました。…あれ?←
淵ちゃんの逞しい腕と胸板と包容力のあるお腹にきゅんとしたという事で!
この親子は拙宅でも随一の癒し担当予定です。
拍手になり損ねの産物でした。
title thanks:魔女のおはなし
2013/06/18
天倉