なんだ、
意外に
かわいいやつ
なんだな


「皆さーん!ご飯ですよー!」




暗い穴蔵に、一際明るい声が響いた。笑顔の娘―ナマエがひょこりと顔を覗かせると、作業を進めていた男たちはわぁ、っと歓声をあげる。大量の握り飯を腹を空かせた彼らに振る舞いながら、ナマエは一人の男に歩み寄っていった。




「官兵衛さま!」

「おう、来たなナマエ」

「今日はおかかと梅干しです!」

「そうか、今日もまた美味そうだ」




枷の鎖をじゃらりと鳴らし、官兵衛は握り飯をどうにか掴むともぐもぐと咀嚼する。その様子を隣に座ってはらはらと見守っていたナマエだったが、官兵衛の悪くない、という呟きにほっと息を吐いた。分かり易い安堵の仕方に、官兵衛は苦笑を零す。




「…お前さんも物好きだな」

「?」

「いや、分からんなら良いさ」




もう一個くれ、との要求にナマエはどうぞ、と差し出した。睦まじいとさえ見えるそんな二人の光景は、この穴蔵の日常となっている。食べ終えたらしい部下の一人が斜口で、気軽に官兵衛を呼んだ。



「なぁなぁ官兵衛さん!」

「ん?何だぁ?」

「結納はいつ頃にするんですかい?」

「は?」

「なっ、何言ってるんですか!」




ぽかんと口を開けた官兵衛とは裏腹に、ナマエは真っ赤になってわたわたと慌て出す。嗚呼、そういうことか、と官兵衛が口を開く前に、ナマエはぶんぶんと手を振り早口でまくし立てた。




「わっ、私は別に、官兵衛さまの事が好きとか慕ってるとかではなくてっ」

「…そんなに否定するほど嫌なのか」

「そんな訳無いです!!出来れば、あの、ずっとお傍にいれたらな、とかは思いますけど…!!」

「それが夫婦になるって事じゃ無いのか?」

「!!!」



めおとだなんて…!とナマエは駆け去って行ってしまった。置いていかれた形の官兵衛は、残りの握り飯を頬張りながら、悪くない、と内心で呟いた。






なんだ、意外にかわいいやつなんだな
照れ隠し、ってやつか







―――――――――

初黒田でした!(無双は官兵衛殿。呼称で区別します)
天倉的には可愛い奴だなぁ、と思うのです。しかし、雑食にも程があるかな…。
実は拍手用に書いておいて忘れてた過去作。

title thanks:DOGOD69

2011/10/21
天倉