吉継様のお部屋へ訪れると、見たことのない物があった。小さな彩り豊かな粒が皿にこんもりと盛られている。しげしげと眺めた後、いつだって愉しそうな笑みを浮かべた吉継様に小首を傾げながら問いかけた。
「吉継様、これは何ですか……?」
「それはな、金平糖という菓子よ」
「お菓子!」
固そうでとげとげしているけど甘いのか。食べてみたくなって手を伸ばせば、お皿はすいと宙に浮き、吉継様に取られてしまった。
「……吉継様」
「そう睨むなナマエ。ただ食すだけというのも味気ない故」
「味気なく無いです。甘いのでしょう?」
「さて、我にはとんと分からぬ。どれ、先に味見をしてやろ」
ぽこり、と口に放り込み、舌先でころころと転がしている吉継様の表情はゆるりとしている。絶対甘いんだ、だって吉継様は甘い物を食べるとそんな顔をなさるもの。
「狡いです。私も食べたいのに……」
「そう急くな、まだたんとある。ほれ、我から取ってみよ。手を使ってはならぬがな?」
吉継様はにんまり笑うと、金平糖を軽くくわえた。どうやらそれを取れという事なのだろうけど……手を使わないとすれば、口で?
「む、無理です!」
吉継様の目線が、無理ということもあるまい、と言っている。でも、丸っこくて小さな金平糖を口で受け取るのは、顔をかなり近付けねばならないし、そんな至近距離なら何をされるか分からない。私が躊躇っている内に、待ちくたびれたのか金平糖を飲み込んで、吉継様は瞳を細めた。
「我の口移しは喰えぬと申すか……我は哀しい、大層哀しい」
「いえ、そんな事は」
「我が病に蝕まれておるからであろ?好いた女子に拒まれるとは……我は世で一番不幸者よなァ」
「違います!ただ、恥ずかしくて……!」
はぁ、と大仰なまでに溜め息を吐かれてしまい、私は必死で弁解した。何となく、からかわれている気はするんだけど、でも。……私が吉継様を嫌ってなどいないって事は、きちんと伝えておくべきだ。
「もう一度、私に機会をお与え下さい」
「うむ。ぬしがそこまで言うならやってやらんことも無い。来やれ……ナマエ」
包帯を纏う吉継様へ身体を寄せ、顔を近付けていった。再びくわえられた口許の糖粒を、そっと受け取る。ころん、と口の中に転がり込んだと思った矢先、唇が奪われ舌がぬめりと侵入してきた。
「んん、ぅ……!」
溶けだしていく仄かな甘味を楽しむ余裕も無く、暴れる舌先に蹂躙された。その深い接吻は、金平糖が全て消えるまで暫く続いて。解放された時には、吐息に甘さが宿っていた。
「……甘い、甘い。ナマエは甘くて美味なモノよな」
「こ、んぺいとの、所為です……っ」
「もひとつ、いらぬか?」
金平糖を摘まんで、吉継様が笑みを深める。私を撫でる片手が殊に優しいから、観念してこくんと頷いた。二人で味わうその粒は極上の甘さだもの。
口許に求める打算と誘引
ころり、とろり
石田軍幸せ計画。刑部は書きやすくって良いですね。見習え凶王!(笑)
仄々する予定が、金平糖でポッキーゲームして微裏ちっくになった。何故じゃ。
title thanks:肋
20111114
天倉