「…知っているか、ナマエ」
「何です?」
「春に降る雨は、草木を育むのだ。甘き雨と書いて甘雨と言う」
「かんう…雲長様と同じ名なんですね」
ふいにナマエが立ち上がり、窓辺へと歩み寄った。何事かと関羽も視線を其方に向ける。ナマエは窓を開けると手を伸ばし、暫し雨と戯れた。
「如何した、ナマエ」
「…ん、少し」
「冷えてしまうぞ?」
「はい」
関羽の柔らかな静止を流し、ナマエはしとどに濡れた掌に溜まった露を、あろうことかぺろりと舐めた。驚きながらも関羽は、手拭いを持ってナマエに近寄ると彼女の手を取った。
「雨の味は如何だ?」
「やはり甘く…は無いですね…」
「ははは。で、あろうな」
しょんぼりと悲しげに肩を落とすナマエの濡れた手を、苦笑しながら関羽は優しく拭った。普段は大人しい彼女だが、たまにこの様にして突飛な行動を取る。そんな子どもらしい所も、関羽には愛しく思えてしまうのだが。
「…でも、」
「む?」
「此方の「かんう」は私にとっても甘いから、それで良いのです」
そう恥ずかしげに微笑むナマエに、関羽も照れながら美髯を一撫でした後、おもむろにナマエの額へと口付けた。
甘き雨の如し
惜しみなく降り注ぐ
春の内に更新出来れば良かったんですがね…締めがどうにも思い付かなくて難産。
過保護な美髯公万歳!穏やかほのぼの文武両道な彼が好きです。
2010/06/01
天倉