甘き雨
の如し

雨が、しとりしとりと静かに降っていた。久々に時をゆるりと過ごそうと決めて、関羽とナマエは各々書物を手に取った。互いに互いの邪魔はせず、だがしかし時折視線を交えては微笑み合う。外界はどんよりと薄暗かったが、二人の部屋は仄かに甘く、穏やかな雰囲気に包まれていた。




「…知っているか、ナマエ」

「何です?」

「春に降る雨は、草木を育むのだ。甘き雨と書いて甘雨と言う」

「かんう…雲長様と同じ名なんですね」





ふいにナマエが立ち上がり、窓辺へと歩み寄った。何事かと関羽も視線を其方に向ける。ナマエは窓を開けると手を伸ばし、暫し雨と戯れた。




「如何した、ナマエ」

「…ん、少し」

「冷えてしまうぞ?」

「はい」




関羽の柔らかな静止を流し、ナマエはしとどに濡れた掌に溜まった露を、あろうことかぺろりと舐めた。驚きながらも関羽は、手拭いを持ってナマエに近寄ると彼女の手を取った。




「雨の味は如何だ?」

「やはり甘く…は無いですね…」

「ははは。で、あろうな」




しょんぼりと悲しげに肩を落とすナマエの濡れた手を、苦笑しながら関羽は優しく拭った。普段は大人しい彼女だが、たまにこの様にして突飛な行動を取る。そんな子どもらしい所も、関羽には愛しく思えてしまうのだが。




「…でも、」

「む?」

「此方の「かんう」は私にとっても甘いから、それで良いのです」




そう恥ずかしげに微笑むナマエに、関羽も照れながら美髯を一撫でした後、おもむろにナマエの額へと口付けた。




甘き雨の如し
惜しみなく降り注ぐ








春の内に更新出来れば良かったんですがね…締めがどうにも思い付かなくて難産。

過保護な美髯公万歳!穏やかほのぼの文武両道な彼が好きです。


2010/06/01
天倉