混ぜるな
危険を
混ぜてみる

「これはこれは、梟雄殿。ご機嫌麗しゅう」

「羽州の狐殿こそ、遠路はるばるご苦労な事だ」

「信長公に呼ばれたのだからね、いつでも馳せ参じる所存だとも」



魔王の屋敷で偶然鉢合わせた二人は互いにおや、と片眉を上げた。最上が優雅に腰を折ると、松永も薄く笑う。それぞれ纏う雰囲気はどこかぴり、と刺々しい。そこへ、織田の侍女であるナマエがとたとたとやってきて、ぺこりと頭を下げた。



「松永様、最上様、お待たせ致しました!」

「全くだな。招待しておいて、放っておくとは」

「うぅ、申し訳ありません…!」

「ナマエ君、私達は今来たばかり。だから謝る事は無いのだよ!」



しょげるナマエの肩をぽんぽんと最上が撫でた。ありがとうございます、とナマエがはにかむと、少し眉根をしかめた松永がナマエの腰をぐい、と引き寄せた。



「ま、松永様…!?」

「羽州の狐殿は心が広いようだが、生憎私は彼程人が出来ていなくてね…」

「あの、その、私…!」

「そうだな、代償として卿自身を…」

「駄目だよ梟雄殿!ナマエ君は信長公のお気に入りなのだからね!」



ナマエの顎をつい、と掬ってにんまり笑みを深めた松永から、最上が慌ててナマエを引きはがした。身の危険を感じたナマエも最上の背中に隠れる。松永は、心外だとばかりに肩を竦めた。



「私が私である所以を奪わないでもらいたいのだがね、狐殿」

「だからといって、貴公がナマエ君を好き勝手にして良い理由にはならんとも!」

「……ほぉ。是が非でも、私の邪魔をする、と?」

「貴公がその気ならば、いくらでも受けて立つよ!」

(信長様…お助けを…!)


ばちり、と火花が散る音がしそうな両者の勢いに、ナマエははらはらと様子を窺う事しか出来ない。心の中で、己の主君に助けを求めた丁度その時。願いが通じたのか、奥座敷から、地を這うような低い声が轟いた。



「是非も無しぃ……!」



静かに睨み合っていた松永と最上は、その場にゆるりと膝をついた。ナマエも同じく膝をつき、深々と頭を下げる。どろりとした禍々しさを纏った織田が、堂々と其処に現れた。


「ナマエ……」

「は、はい…!」

「貴様は…誰の物、ぞ?」

「私の身も心も…信長様に捧げております」



ぞわり、と身を撫でる殺気にも似た空気に、ナマエは震える声を抑えて応じる。畏怖と、それを超える敬慕。ナマエの答えに満足したのか、織田はばっと踵を返した。その途中で顔だけ振り返り、ぎら、と押し黙ったままの松永と最上を睨む。



「早う来い…遅参は許さぬ」



是非もない迫力を残して、奥座敷へ織田の姿が消えた。重苦しい雰囲気がどうにか和らいでから、ナマエが漸く顔を上げる。


「…では、ご案内致しますね」

「嗚呼、お願いしよう」

「宜しく頼むよ、ナマエ君!」



しずしずと歩き出したナマエの後ろに、松永と最上は悠々とついていく。その途中でくつり、と梟雄が笑みを零した。



「それにしても…流石は第六天魔王。いつ目通りしても変わらぬ業だ」

「それこそが偉大なる信長公なのだよ」



貴公もそう思うだろう?と天狐もにまり笑みを浮かべた。





混ぜるな危険を混ぜてみる
かくして、因縁渦巻く茶会が始まった








ついったログの謎紳士同盟コンビ+αでした。

アンケで「BSR信長公を読んでみたい」とあったので書いてみましたが…ちょっとよく分からないですね。

信長公の持つ独特な雰囲気というか喋り方を再現するべく、フォントとか変えてみました。PCなら反映されるかな?

宜しければ確かめて下さいな^^


title thanks:しばし待て、

2012/02/20
天倉