愛せない
と言ったら
嘘になる

「やれ、雪が降り始めたわ」



空からひらりと舞い降り始めた白綿を、吉継は布にまみれた手で受け止める。きっと直にであったなら、見る間に溶けたのであろう。しかし雪の欠片は、白い包帯に紛れるように、ゆっくりじわり解けて水となった。



「…ヒヒ」



それがまるで己への皮肉のように思えて、吉継は白く染まる息と共に引きつるような嗤い声を上げた。傍に佇んでいた娘が慌てて傘を差し出して、濡れては困ると眉尻を下げる。乗っていた輿の高度を落とし、その傘にどうにか入った。幾分近くなった視線は、心配そうに吉継を見つめる。



「吉継様、お部屋に戻りましょう。お体に障ります」

「…そうよな、健やかなぬしにも寒さは辛かろ」

「吉継様も同じです」


きっぱりと、娘…吉継の侍女を買って出たナマエは断言する。吉継が病に蝕まれる前も、後も変わらずに接する彼女は、ひたすら主を第一に思う娘だった。その一途さはどこか吉継の友人に似ていて、突っぱねるにはどうも具合が悪い。




「ぬしはまこと心配性よな」

「誰の所為でございましょう」

「我、か。ヒヒ…愛想が尽きたか、呆れたか」

「いいえ。生涯主は吉継様と決めております故」




どこぞの竜の右目の様よな、と吉継はまたくつくつ嗤う。反対にナマエは溜め息を一つ。白く流れた其れを見て、吉継はナマエの体が小刻みに震えているのに気付いた。寒い、と弱音を吐く事もせず、主を案じる。見上げた従者に捕まったものよ、と不幸を嘯いた。



「小言の多い従者につきまとわれて、吉継様は不幸でございましょう」

「ヒヒ、自覚済みか、ぬしはまこと面白い。…しかし、風邪でも引かれてその小言が減ってはかなわぬ、そろり戻るとするか」



世の全てに等しく不幸を望む吉継には、その気遣いが心地好い。しかしそれは胸の内に留めて、火鉢の用意をナマエに命じたのだった。




愛せないと言ったら嘘になる
つかず離れず、どうかそのまま






(熱っ…)
(やれ、火傷などしてくれるな。主従で見れぬ顔とはかなわぬ故)
(…吉継様もなかなか…いえ、何でもありません)






ツイッタログプラス。
もしかしたら約一年くらい前のじゃないかな…(遠い目)

刑部も何だかんだ心配性だと良いよね!

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2013/01/04
天倉