寒さ故に目を覚ますと、傍らの布団は既に畳まれていた。私より遅く寝ているのに、私より早起きなこの庵の主。眠った姿は見たことがない。もしかしたら寝てないのかも、とぼんやりした頭で思う。
(……お迎えに、行かなくちゃ)
何故かそう思えて、温もりの残る布団から抜け出す。襟巻に手袋と防寒具をしっかり身に付け、私は凛とした静かな空気の中、とある場所を目指した。きっと、其処にいるという不思議な確信があったのだ。
「おはよう、みんな」
亡者兵さんに挨拶をしつつ、ホウ、と真似て息を吐いてみる。白く染まった吐息は、すぐに溶けるように消えた。直に冬を迎える陸奥の寒さは厳しい。震える体には感覚が殆どなかったけれど、歩いている内にほかほかとしてきた。
(…いた)
恐山の頂上、開けた広場のような場所の塔の上で、探し人は天を見上げていた。夜明け前の明るくなりつつある空には、細く青白い月が浮かんでいる。その寂しげな様は、まるで彼のようだった。
「…おぬしか、早いな」
声をかけようか迷っていると、此方に気付いた彼はすとん、と軽やかに降りてきた。老人と言っても差し支えない年の方なのに、全く年齢を感じない動きは、寒さの中でさえも鈍らない。
「…何か、起きたか」
「いいえ。ただ、じさまを迎えに行かなくちゃと思って…」
「ホウ、ホウ。…わざわざすまぬな」
ふ、と隻眼を細めた彼は、帰るぞ、と坂を下り始めた。その小柄な背を追って、手を握りしめる。
「……如何したか、ナマエ」
「…こうすれば少しは温かくなりますから」
皺が多くかさりとした手は、私より長い年月を重ねた立派な手だ。けれど、その冷たさにはひやりとしてしまう。まるで吐息のように、いつか消えてしまいそうで。私の不安を感じ取ったのか、彼は手を繋いだままゆっくりと歩き始めた。
寒月とあなた
ひそりと佇む
初南部さんでした!
初夢はシリアスというジンクスを踏襲(笑)
南部さんに拾われたヒロイン設定。とある所でかなり活躍しております。
南部さんと月って似合うよね!
2012/11/28(執筆)
2013/01/12(更新)
天倉