不覚にも
溺愛

個人用の電伝虫がぷるる、と控えめに鳴った。大きく息と煙を吸い込んでから吐き出し、スモーカーは気怠げに受話器を取った。



『スモーカーさん!緊急事態です!!』

「……何だ、どうした」



電話向こうは、スモーカー馴染みの酒場の女店主、ナマエであった。大人の色気を備えた容姿とは裏腹に、表情豊かな子供っぽい仕草がやけに魅力的……だというのはさておき。小さな声の彼女に、何かを察知したスモーカーの眼光は更に鋭くなった。




『賞金首さんが……うちに来てるんですよ!』

「小物クラスか?」

『そこまでは……でも、スモーカーさんのお部屋で見たことが……!』

「……おい、おい?……チッ!」


ナマエの声は、いきなりぶちりと切れてしまった。嫌な予感がよぎり、大きく舌打ちしながらスモーカーは愛用のダウンをバサリと羽織る。



「たしぎィ!!」

「は、はい!」

「ちょっと出る。後は任せた」

「えぇっ!?」




大股で部屋を出て行くスモーカーを、部下であるたしぎが止められる筈も無く。ビローアに飛び乗ったスモーカーは、全速力でナマエの元へと走った。



(間に合え……ッ!!)




ビローアを半ば乗り捨てるように降り、モクモクの実の能力全開でナマエの店に飛び込んだ。



「無事かッナマエ!!!」

「な、何だァ!?」



酒を飲んでいた男達が、煙の腕に掴まれて慌てている。それには目もくれず、スモーカーは店内にギッと視線を走らせた。



「ス、スモーカーさん……!」




店の奥から出てきた彼女は、怪我一つ無かった。内心安堵したスモーカーだったが。



「本当にごめんなさい……!実は……デマなの」

「……あァ!?」

「常連さんに賭けをしないかって言われて。スモーカーさんがもし来なかったら、その人とデートしなくちゃいけなくて……」



唖然とするスモーカーに、彼女は申し訳無そうに事の顛末を語った。予感が外れた事に安堵する一方で、賭けの内容があまりにも腹立たしく、スモーカーは複雑そうに舌打ちをした。



「おれが来なかったら本当にそうするつもりだったのか」

「……考えてなかったの。ううん、考えられなかった」

「あァ?」

「スモーカーさんが来てくれるの、私分かってたから」



でも嬉しいな、と笑うナマエに、スモーカーは再び舌打ちをした。





不覚にも溺愛
翻弄されてばかりだ





(……で、どの野郎と賭けしたんだ?)
(えっと……どうするつもり?)
(少し話を聞いてもらうだけだ……少し、な)
((絶対それだけじゃねェェェ!!))





拍手夢「目が離せない」のつもりで書いたけどボツになった作品。
拙宅のスモーカーさんは無意識に溺愛、過保護なんだと思います。

とりあえず、常連さんはドンマイ★←


title thanks:Largo

2011/10/07
天倉