退屈を
抱き
締めて

「遠呂智さんの手は冷たいですね」

「貴様が温かいだけだ」

「そうだとしても…冷たいです」




彼の大きな手には、無機質な肌の色と同じく、温かみは無い。遠呂智さんが特に何も言わないのに甘えて、ぺたりぺたりと触ってみた。何となく蛇の鱗の質感に似ているようだ。




「寒いと動きづらいですか?」

「……少し、な」




嗚呼やはり。遠呂智さんが低体温なのはきっと、鱗のある動物と同様に体温を保てないからなのだろう。ならば。




「日向ぼっこ、致しましょう」

「何…?」

「お日様の光を浴びれば、温かくなりますよ」

「我はこのままで構わぬ」

「取り敢えず行きましょう!」




動きたがらない遠呂智さんの手を引っ張り、日当たりの程良い場所へと移動する。座るのに丁度良い岩を見つけたので、遠呂智さんに勧めてみた。




「座れと申すか」

「はい」




笑顔で返事をすると、遠呂智さんは渋々岩へと腰掛ける。その足元辺りに私も座ろうとしたのだが、遠呂智さんは何かがお気に召さなかったのかむぅ、と唸った。




「…ナマエ」

「如何しました?」

「座れ」




ぽん、と示されたのは遠呂智さんの膝。恐れ多いし、重いですよ、と辞退しようとしたのだが。




「貴様が重いなどと言えば、我は我の鎌を持てぬ」

「いえ、でも…心苦しいと言いますか」

「我を温めるのが目的ならば、貴様自身でも我に尽くせ」




遠回しにとにかく座れ、と言われているものなので、仕方なく遠呂智さんの片膝に座った。顔を上げれば、いつもより近い遠呂智さんの瞳と視線がかち合う。




「…この後は、何をする」

「何にもしませんよ。ぼーっと過ごすんです。寝ても良いですし」

「…前と変わらぬ」

「いいえ、そんな事ありませんよ」




前、とはきっと、幽閉されていた頃の事。彼は独りで、何もせず何も出来ず何も変わらず、悠久の時を過ごしていたから。




「今はお日様があります。雲は流れてゆくし、風が吹きますし、鳥も囀ります」

「だが…退屈だ」

「私は…遠呂智さんと過ごす退屈な時間なら、好きです」




何の刺激も無く平和で穏やかな時だからこそ、感じるのが退屈。ならば、遠呂智さんとずっと退屈を持て余しながら過ごしたい。少しでも、長く。




「遠呂智さんは…お嫌ですか?」

「……構わぬ」

「良かった。でも、慰めに唄でも歌いましょうか?」

「好きにするが良い」




投げやりだけれど少し優しく。嬉しくて微笑めば、遠呂智さんも少し目を細めていた。





退屈を抱き締めて
温まる体と、心







勢いあまって初遠呂智さま。拙宅設定では蛇の化身なので、変温動物に近い感じです。日向ぼっこ好き。

色々と設定を捏造したので、いずれシリーズか中編にしたいと思います^^


20110227
天倉