夢幻を
想う

(「退屈を抱き締めて」の続き)




今日の天気はとても過ごしやすかった。日差しは柔らかく、徐々に身体が温まっていくのが分かる。それに呼応するかのように、眠気もやってきていた。くぁ、と欠伸をかみ殺す。




「眠いならば、寝れば良い」

「遠呂智さんは?」

「我は眠らぬ。…いや、」




眠れぬ、と。遠呂智さんは少し目を伏せた。仙界の住人であるから、眠らずとも良いのは確かなんだけれど。私が顔を曇らせると、遠呂智さんはす、と目を細めた。




「案ずる程の問題はない」

「でも、」




眠らないという事は、ずっと考え続けるという事だ。疲れてしまわないのかな。…何より、孤独に蝕まれてしまうではないか。そんな心配をよそに、遠呂智さんはふ、と笑う。




「微睡むくらいは出来る」

「そ、うですか。それなら、良かった」




強者を求め、終焉を欲する遠呂智さんの事だから、如何すればそれが可能なのかをきっと考えている。出来る事なら、それを諦めて欲しい私としては、安らかに眠ってもらいたいのだ。




「我は良い。貴様は眠れ」

「…じゃあ、お言葉に甘えて」




結局その思いは届かなかったようで、遠呂智さんは眠る気が無さそうだ。許可を貰った途端に襲い掛かる睡魔に負けて、私はとん、と遠呂智さんの体へ身を預ける。




「…夢に遠呂智さんが出て下されば良いのに」




ぽつりと呟くと、遠呂智さんは何故だ、とでも言うように此方を見つめた。




「蛇の夢って縁起が良いんですって。風魔さんが仰っていました」

「……それ故、か」




遠呂智さんの眉が少し顰められた。怒りとも悲しみともつかない瞳が、困惑を宿している。勿論理由はそれだけじゃ無いから、言葉を続ける。




「何より、…遠呂智さんと一緒に居たいんです」




寝てしまえば、折角の遠呂智さんと過ごす時間が無駄になってしまう。ずっと続くと思いたいけれど、この恋はいずれ終わりを迎えてしまうのが分かるから。




「ナマエ」

「はい?」

「今は…今は未だ、その時ではない」




だから、貴様の傍を離れはしない。


限り有る時間故に、最大限を尽くして。その言葉は嬉しさと切なさを伴うものではあったけれど。私はそれに見て見ぬ振りをして、お休みなさいと目を閉じた。





夢幻を想う
全てが夢であったなら







遠呂智さまとは基本仄々悲恋です。切なさ重視。

短編だとあまり関係無いですが、遠呂智さまヒロインは仙女です。


20110227
天倉