(よくもまぁ降ることで)
空からこれ程大量の水が降ってくるのが何とも不可思議で、飽きがくることがない。水を湛えた大きな瓶でもあるのだろうか、などと詮無き事を考えていると。
「ナマエ」
「あ、半蔵様。このような時間に此方へいらっしゃるとは珍しい」
任務帰りですか、と寝そべったまま問えばこくり頷く。寡黙で真面目な上司は、私の警戒心がまるで感じられない今の姿にご立腹のようだった。無理もない。
「やっと涼しくなったんですよ」
「……忍が怠けるな」
「失敬な。きちんと仕事はしたんですからね」
殿の暗殺を試みた不埒者を始末したし、今だって護衛の真っ最中だ。殿は離れに籠もっておられるから、人もあまり来ない。埃っぽくじめじめとした屋根裏でひたすら待つより、縁側で悠々としていた方が仕事へのやる気も出るというもの。それを力説すると、
「忍が忍ばずして如何する」
「ごもっとも」
軽く蹴り上げられたので、仕方なく姿勢を正す。口数が少ない代わりに手や足が出るから困りものだ。まぁ、加減してくれてはいるから、きっと愛情の裏返しなのだろう。
「……違う」
「ちょっと半蔵様ってば勝手に心読まないで下さいよっ」
「お主が分かり易い故」
「それって忍失格ですかねぇ」
「鍛錬あるのみ」
「え、あっ、半蔵様!」
ひょい、と思ったより易々と私は肩に抱え上げられてしまった。護衛の任務とかあるのに!
「他の者に交代済み」
「流石は半蔵様、って問答無用で連れて行くの止めて下さいよ!」
「聞かぬ」
ゆさゆさ揺られる視界の中で、雨は天へと上っていった。
逆さまに降る雨
梅雨にupし忘れた話。半蔵が意外とアクティブ。
title thanks:静穏
2011/07/06
天倉