04

今日は私や宮くんが委員をやっている体育祭である。
本番までは委員全体で集まることもあったが、女子は細かい作業、男子は荷物運びなどの力仕事とバラバラだったため宮くんとはあまり会うこともなかった。

角名くんからはあれからちょくちょくLINEがきて「侑はリレーの選手になったよ」とか「部活対抗リレー侑も走るよ」とか宮くんの情報を教えてくれた。
「名字さんはなににでるの?」と聞かれたので「借り物競争だよ。じゃんけんで負けたん最悪すぎる」と送れば「面白そうだから見るね」となかなかに失礼な言葉が返ってきた。

運動部からしたら体育祭は楽しいのだろうけど、帰宅部の私からしたら雨で潰れればいいのにと思うイベント堂々の第一位である。
去年から比べれば宮くんや角名くんと知り合ったので、応援する人もいるしまだマシではあるのが。

『次は、クラス対抗リレーです。走者は指定の位置についてください。』

そうアナウンスが入れば、ぞろぞろと各クラスの選抜メンバーがグラウンドへ集まってきた。
宮くんはいるだろうかと探せば、並び終えて暇そうにしている宮くんと目があう。
口パクで「応援してな」と言われ「クラス違うやん!」と思わず笑ってしまった。

「楽しそうだね」

後ろから声をかけられたので振り向けば角名くんがいて「あれ、角名くんはでないん?」と聞けば「あんな面倒そうなのはやらないよ」と笑われた。

「侑アンカーなんだよ。治には負けないって意気込んでたから応援してあげて。みんな好きに応援するから大丈夫だよ。」

そう言われれば、確かにみんな「治が勝つ方にジュース一本!」とか「侑、負けたら奢りーや!」などとクラス関係なく騒いでいる。

「角名くんはそれを言うためにここにきたん?」

角名くんは少しびっくりした顔で私を見つめ、少し考えたあと「俺たちお友達でしょ?一緒にみようと思って」と悪い顔で笑った。

『位置について、よーい…ドン!!』

スタートのピストルが鳴り、一斉に走り出した。
みんな選抜されただけあって速い。
あっという間に最終走者へとバトンは繋がれ、1組と2組はほぼ同時にバトンを受け取った。
色んなところから宮くんと治くんへの声援がかかる。
去年は早く終わらないかなあなんて思って退屈だったけれど、知っている人がでるってだけでこんなに楽しくなるなんて。
周りの熱に巻き込まれ、私も大声をあげた。

「宮くん!!!負けないで!!!」

結果は宮くんが僅差で勝利。
リレーの一部始終をスマホで録画していた角名くんは「面白いのが録れた」と言っていた。

退場の音楽が鳴りグラウンドから捌けると、宮くんはこちらへ駆けてきてくれ「名字さん、声聞こえたで!ありがとお!!」と喜んでくれた。


「お疲れ、侑」

「はあ!?角名!!お前なんでここにおんねん!!クラスちゃうやろ!!」

「だって俺、名字さんとお友達になったから。ね?」

角名くんの言葉に頷けば、宮くんは「オトモダチ〜!?」とすごく嫌そうな顔で角名くんを見た。

「毎日LINEもしてるしね」

そう微笑まれ、毎日は語弊がある気もするけどまあ否定するところでないかと「そうだね」
とこたえれば宮くんは「俺より仲良しやん!ずる!!」と子どもみたいにジタバタした。
宮くんは角名くんが大好きなんだなあと思ったところで、借り物競争のアナウンスが入った。

私が心底嫌そうな顔をしたのだろう、宮くんが「大丈夫か?」と心配してくれたが全然大丈夫ではない。

「今年の借り物のお題、変なの多いって聞いたよ」なんて角名くんが意地悪く言うものだから「アホなお題当たったら角名くん連れてってこの人であってますって言い張ったるわ」と言い返せば宮くんに「角名やなくて俺にしてや!」とよくわからない張り合いをされた。

二人に見送られ借り物競争へと向かうが、本当に変なお題に当たらないよう願うばかりである。



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