03

はじめは夜に子連れでくるなんて珍しいなあと思ってみていた。

まだ若そうな見た目なのに随分と大きな子どもと一緒にいて、疲れが滲む顔をみて子育て大変そうやなと思った。

でも、しばらく様子を見ていたらお母さんというよりはお姉ちゃんといった感じで、ひとつひとつ丁寧に子どもと関わる様は北さんを思い出させた。

「しっかりおにぎり持って食べるんやよ」

「まずはいただきますや」

「ほら、お店の人にちゃんとごちそうさまって言わんとアカンよ」

向こうはそんなつもり全くないのだけれど、なんとなく背筋がピンとする自分に思わず笑ってしまった。

連れてる女の子が気に入ってくれたらしく、平日は毎日のようにテイクアウトしてくれて、自然と会話もするようになった。

そこでわかったのが、彼女の名前は名前さんで、いつも連れてる女の子はお姉さんの子どもらしい。

諸事情から一ヶ月ほど一緒に暮らすことになって、はじめての子どもとの生活にてんやわんやしていると笑っていた。

話を聞く限り大変そうなのに、それすらも楽しんでいる様子に気づけば惹かれていて、彼女がくる平日の夜がとても楽しみになっていた。



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