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ひなの朝ごはんはおにぎり宮のおにぎりがいいと言うので、仕事帰りにひなを迎えに行ったその足で一緒にお店へ行くのが日課になった。

幸い私の仕事は定時であがれるので、お店が混む前に買うことができる。

流石に毎日買いに行くと自然と顔も覚えられて、暇な時は雑談も少しするようになった。

「あれ、今日はひなちゃん一緒におらんの?」

「あー、今日は姉が仕事休みなんでひなは姉がみてるんです。だから夕飯も別なんですよ」

「外で食べるならええ店知っとるよ」

「え、ほんまですか?」

「おん、おにぎり宮っていうんやけどな」

他愛ない話だけれど、端々で笑わせてくるのが面白くて「ほなそのお店で夜ご飯にしようと思います」と返せば「まいど〜」といい笑顔で返される。

一人だったのでカウンターへ座り、今日は何にしようと考える。
平日の朝はほぼここのおにぎりを食べているので一巡はしたはずだ。

悩んでいると「今日は試作品があるからそれ食べてみん?」と声をかけてくれた。

「試作品ですか?」

「おん、感想教えてもらえたら嬉しいんやけどどないする?」

「ええんですか?」

「お客さんの声が一番やからな〜」

「ほな、お願いします」

握られたおにぎりは三種類で「どれが何ですか?」と聞けば「お楽しみやな」と笑われた。

まさか変なのは入っているまいと迷った挙句、真ん中のを取って食べると口の中に凄まじいからさが広がって咄嗟に隣にあった水へと手を伸ばす。

「な、なにこれ!?」

「青唐辛子味噌」

ケラケラ笑いながら話す治さんは悪戯が成功したと言わんばかりに楽しそうにしている。

「これほんまに試作品です!?」

「それ、辛いの好きな人には好評なんやけど、名前さんには辛すぎるんかな」

「他のは普通ですよね?」

「食べてみんとわからへんなあ」

恐る恐る2個目に手を伸ばして口に頬張れば、それは甘辛い味のするそぼろだった。

「これは美味しい!」

「それ、さっきのがダメすぎたからちゃう?」

まだひーひー笑ってる治さんを睨めば「すまんすまん、あんな反応するとは思ってへんかったんや」と謝られた。

結局、最初に食べたの以外は美味しく食べられて、美味しかったですと伝えれば「せやろせやろ〜」と嬉しそうに笑ってくれた。

いつもはひなを交えて、たまに二人きりで、そんな日々を過ごしていたらいつの間にか治さんとの距離も近くなって、気づけば常連さんたちから「二人はいつお付き合いするん?」と聞かれるようになった。

治さんも「それは名前さんに聞いてみんとわからんなあ」と私を見てニヤリと笑うあたり、私のことを悪く思っていないのは明確で、私自身も治さんのことを好きになりつつあるのは自覚していた。

そんな折のことだった。



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