05
「名前!家決まった!!今週末には入居できるっていうから来週には引っ越せそうやわ!」
姉が嬉しそうに報告してくれて、おめでとうという気持ちと、ひながいなくなればおにぎり宮に行くこともなくなるんだよなという気持ちとで揺れた。
そんな考えを振り払って今までひなを理由に通っていたのがそもそもズルかったのかとすぐ反省したけれど、一人暮らしのしがない社会人に自分のためだけに毎朝のおにぎりを買う余裕はなかった。
「じゃあ今週末お祝いしよか!」
自分に喝をいれるため、わざと大きい声で言ったら「そんな嬉しそうに言われんのも複雑やな」と苦笑いされた。
幼稚園から帰ってきたひなにも伝えたら「名前ちゃんはそれでええの?」と聞かれ、幼稚園児侮り難しと唸らされる。
「私はひながいなくても通うから大丈夫やで」
そんな風に言ったのに、次の週会社へ行ったらまさかの辞令がでていて、私の大阪行きが決まった。
今住んでいるところからも通える距離ではあるが、できることならもう少し近いところへ引っ越したいというのが本音で、治さんのお店のためだけに今のところへ住み続けるというのは私にはできなかった。
辞令は一週間後で、仕事の引継ぎや引っ越し先の選定をしていたら治さんの店へ行く余裕なんて一つもなかった。
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