06
移動した先は今までとは違い残業もあるし、仕事量も多い部署だったので平日は帰ったらすぐ寝て、土日は新しい家を探すだけの生活になっていた。
治さんに辞令が出たことが言えずにもう何週間経ったのだろう。
家もいいところが見つからずに結局引っ越せずにいる。
明日こそはいこうと心に決めるのに、いつも疲れて行く気力がわかないでいた。
それすらも言い訳なのは自分がよくわかっていて、今更どんな面さげて会いに行くんだとため息をつく。
そんなとき、ひなから姉経由で電話があった。
「名前ちゃん、あんな、大阪でBJの試合があるんやけど、その日ママが仕事で行けへんから名前ちゃん付き合うてくれへん?」
我が姪っ子ながらなんていい子なんだろうと思った。
多分私が治さんのところに行けていないのを察した姉がひなと話して試合へと行けるよう手配してくれたのだろう。
治さんやひなの話によるとBJの試合では毎度出店しているとのことだったから。
「ママ、宮選手のこと見たいんちゃう?」
そう聞けば「ママはええねん、名前ちゃんは行きたい?」と言われ、幼稚園児相手に情けない声で「行きたいです…」と伝えた。
ほどなくして電話は姉に代わり「ほな当日の場所とかLINEするからひなのこと頼んだで」と言われ、通話は切られた。
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