05

借り物競争のお題を考えたのは同じ委員の派手な女の子たちだったと思う。
作ってる時に「当たったらおもろいやつがええなあ!」なんて言ってたのを覚えてる。

自分が出ることになって、しかもその“当たったらおもろいやつ”を引くことになるなんてわかってたら何が何でも阻止したのに。
最早後の祭りである。

引いたお題にこんなん誰を連れてっても文句しかでないやんと青ざめるも、さっき言った「アホなお題当たったら角名くん連れてってこの人であってますって言い張ったるわ」というのを思い出し、なるようになれと角名くんの元へとむかった。

「お願いします!!!」

「やだよ…っていうか何これ。名字さんは俺がコレだと思うわけ?」

そう言うものの顔はニヤニヤと笑っていて、怒っているわけではないのがうかがえる。
この状況を楽しんでるというか、私のことを揶揄って遊んでいるというか…多分そんな感じである。

「時間もないねん!お願い!!」と頭をさげるもまたしても「いやだよ」の一言。
そしてにっこり笑い「侑、名字さんに付き合ってあげなよ、コレは俺より侑の方がお似合いだと思うよ。」なとどいってのけた。

「宮くんのこと連れて行くなんて恐れ多い!お願い角名くん付き合ってよ!!」と叫べば宮くんが「何で角名やねん!!俺が行く!」と言って私を引きずってゴールへと向かおうとする。

力で敵うわけもなくゴールしてしまった私に係の人がお題を見せてくださいと言った。
死刑宣告だとしか思えないその言葉に先程引いたお題を係の人へと渡す。

頭を抱える私に宮くんは「緊張してんの?」なんて呑気に聞いてくるが「本当にごめんなさい…許して…」と謝れば少し嬉しそうに「いいやん別に、堂々としてれば」と意味のわからないことを言われた。

「さて、宮侑くんを連れてきた名字名前さんのお題は…」

ああ、もうどにでもなればいい。

「“人でなし”でした!!!!!」

言われた瞬間、宮くんのことを見ることができずにこの原因となった角名くんの方をみればスマホで動画を撮ってる上に、バレー部の人たちと我慢ならないとばかりに爆笑していた。
角名くんめ、絶対許さない。

終わった後宮くんに土下座をする勢いで謝ると「いや、ええねん…。勘違いしてついてったんは俺やしな…。」となんとも言えない微妙な顔で許してくれた。

友人たちからは「宮侑をあのお題で連れてくるとか名前もやるなあ!」と散々揶揄われ、やっぱり体育祭なんか潰れればよかったんだとひとりごちた。



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