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ヘアメイクさんに「お綺麗ですよ」と声をかけてもらい、鏡を見るといつもより少しだけ華やかな私がいた。
入り口の扉が叩かれる音がして「はーい」と返事をすればほんの少しだけ扉が開いた。
「準備終わったか…?」
遠慮がちに聞かれた言葉に「たった今終わったとこやで」と返せば「見てええ?」と聞かれる。
「遠慮せんと入ってええですよ」
その様子にヘアメイクさんも笑って言ってくれて、扉から侑の顔がひょっこりのぞいた。
「名前!!めっちゃ別嬪さんやな!!」
満面の笑みで褒めてくれる侑くんに少し照れて「侑くんもよう似合っとるよ」と返す。
「お二人とも素敵ですよ」
と声をかけてくれたヘアメイクさんに二人して顔を合わせて「ありがとうございます」とお礼を言った。
「親族写真、もうみんな揃っとるから準備終わったなら行かへん?」
「え、まだ早いのにもう来とるん?」
「早よ花嫁さん見たいって騒いどるで」
「準備も終わってますし、行かれますか?」
「あ、ほなお願いします」
椅子を動かし、立とうとしたら「こらこらこら!」と侑くんに怒られた。
ヘアメイクさんに「今裾をお持ちいたしますので少々お待ちくださいね」と声をかけられ、そうだ今は簡単に動ける格好ではないんだと立ち止まる。
裾を持ってもらい、早る気持ちを抑えて親族の待つ部屋へと向かう。
途中で早めにきた友人たちに会い「名前むっちゃ綺麗やな!!」「流石今日の主役〜!」となどと褒められ、一緒に写真を撮った。
友人のうち何人かは振袖を着てきてくれて、とても華やかで綺麗だった。
「今日は来てくれてありがとお!」
「またあとでな!」
友人に手を振り、今度こそ待合室へと足を運んだ。
扉を開けた途端、侑くんのお母さんに「名前ちゃん!!ほんま綺麗やわあ!!」と写真をバシバシ撮られて思わず笑ってしまった。
私の親も侑くんのお母さんに「その写真送ってや〜」なんていいながら私の写真を撮る。
「あれ、治くんは?」と聞けば「ここやで」と後ろから声をかけられた。
「トイレ行っとったん。なんやツム、馬子にも衣装やなあ。それ俺が着てもかわらんとちゃうの」
「アホか!!俺が一番似合うに決まっとるやろ!」
「同じ顔やん」
「心の中がちゃいますう〜!!」
「侑!!治!!ええ加減にしなさい!!」
いつものやりとりに侑くんのお母さんから鉄槌が落ちる。
「名前ちゃんすまんな。こんなのやけど多分ええとこもあるからよろしくなあ」
「オカン!こんなのってなんやねん!」
地団駄を踏む侑くんに治くんが「そういうとこやぞ」と呟く声が聞こえる。
「さ、ではみなさんお揃いなのでお写真撮りましょうか」
なかなか終わらないやりとりに笑いながら写真屋さんが言い、みんな指定された位置へと移動する。
隣に並んだ侑くんが「なあ名前、今日は大変やと思うけど、俺名前とこうやって式挙げられて嬉しいねん」と言い、驚いて侑くんの方を向けばおでこにキスを落とされた。
「し、親族写真なのになにしてくれんねん!!」
「おでこやからええやん!」
真っ赤になった私に、そっぽを向いて口笛をふく真似をする侑くんはとても幸せそうな顔をしていて、つられて私も笑顔になった。
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