アンスリウム

昨日は朝から名前が張り切っとって、キッチンでなにやら作ってくれていた。

先週あたりに「今年の信介の誕生日は私に任せて!」とドヤ顔で言ってきたので、何かやるだろうとは思っていたがまさか昨日の朝からほぼ会えずにキッチンに籠りっきりになるとは。

俺の誕生日は今日で、これからばあちゃんも含めてみんなで俺の家でご飯を食べる予定だ。
高校時代のバレー部の同輩後輩も予定を空けていてくれて、侑と治が率先して準備をしているらしい。

名前が作っていたのは多分今日のためのケーキなのだが、お菓子作りが得意な彼女が一日かけて作るケーキとは一体どんなものなのか少し気になるところではある。

そして俺はというと、付き合って5年目の節目となる今年にプロポーズをしようと思っている。

指輪も以前名前が可愛いと言っていたものを買ってあり、あとは言葉にするだけなのだが長年一緒にいるせいかそういう雰囲気に全くならず、タイミングが掴めないでいて今日に至る。

誕生日パーティーが始まると、治とばあちゃんが用意してくれたご飯がならび、乾杯の音頭とともにしこたま飲んで食べた。

各々用意してくれたプレゼントを開けると俺のことを考えてくれたであろう物たちに自然と笑顔が溢れる。

「信介ー!!ハッピーバースデー!!」

大きな声で入ってきた名前の手にあるのは、力作のケーキだった。

生クリームで形作られた色とりどりの花が散りばめられたケーキの真ん中に、俺の似顔絵が飾ってある。

「これ、名前が描いたんか?」

「そう!あんまり似なくて何回も描き直したから時間かかってもうた」

「名前さん上手いですね〜」

「ほんまや、北さんソックリに描かれとる」

口々に褒められて少し照れながら嬉しそうに笑う名前が可愛くて、思わず笑顔になった。

ケーキをとりわけ、みんなに配ると「これは美味いな」と治が幸せそうな顔で頬張っていた。

「お前が喜ぶんかい」

「やってこれむっちゃ美味いんやもん」

「こんな料理上手な彼女羨ましいですわ」

「ええ奥さんになるな」

「そ、そんなことあらへんよ」

照れる名前に「この先も隣におってくれたら俺は嬉しいけどな」と言ったら、みんなからすごい顔で見られた。

「信介!待って!それどう言う意味!!」

真っ赤になった顔をみて何か変なことを言ったかと考えたら侑に「プロポーズですか!?」と聞かれた。

「今のがプロポーズのつもりはないけど、言葉に嘘偽りはないな」

「プロポーズやないの!?」

「プロポーズがええんか?」

「そりゃプロポーズやったら嬉しいよ!」

もっとロマンティックなシチュエーションのほうが喜ぶかと思ったが、本人が望むならいいかと隠していた指輪を手に取り気持ちを伝えた。

「この先名前が隣におってくれたら俺はずっと幸せや。結婚してくれへん?」

「嘘!指輪なんていつ用意したん!!」

「名前さん、その前に返事返事!」

「私も信介の隣にずっとおりたい!」

俺に抱きついてきた名前をしっかりと受け止めて、薬指に指輪をはめれば「信介大好き!」と頬にキスをされた。

みんなから大きな声で「おめでとうございます!」と祝福され嬉しそうな彼女に、名前が幸せそうならええかと俺も一緒になって笑った。



花言葉:情熱


北さん誕生日おめでとう!

リクエストありがとうございました!



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