06

待ちに待った当日、スーツは変じゃないか髪型は大丈夫かとかいちいちサムに確認しとったら「キショいんじゃボケェ」とキレられた。

とはいえ十年振りに会うんやからあの時のままじゃ格好つかないやろ。
惚れなおしてもらうくらいの気持ちでいきたい。

そして夜、サムと一緒にホテルの会場までタクシーで向かった。

会場へ入るとすぐ色んな人が寄ってきて「オリンピック見たよ」とか「一緒写真撮ってもらってええ?」とか言ってきたけど高校当時関わりのなくて名前も知らんやつばっかで、営業用の笑顔でにこやかに対応したのはほんま偉かったと思う。

名前はまだだろうかと会場内を見渡すけれど、如何せん人が多くて見つからへん。
サムに目配せして探しに行ってもらおうとしたらいい歳した大人のくせに舌を出してあっかんべーをしよった。

サムもサムで知らん女らに絡まれとったけど、店の名刺配って「今度来てや〜」なんて言って上手いこと逃れとる。

俺はといえば腕に絡んでくるやつらを振り解きたいのを我慢してどうにか逃げようとするも、向こうも必死なのか全然離してくれへんでいる。
こんなとこ見られたら立ち直れなくなるやろとキレたいのを抑えて、トイレに行くからと逃げた。

こんな調子で見つかるんかいなとため息をついてトイレの外へ出たら、受付をしている名前を見つけた。

早る気持ちをぐっと堪えて近づいていったら、近くにいた男に名前をとられた。
え、なんやねんその男。
親しげに名前の肩を抱いて話すそいつに一瞬頭が真っ白になった。

伸ばした手は空を切って、名前とそいつは人混みの中へと紛れていった。



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