06
体育祭もおわり、一学期も残すところあと期末試験のみとなった。
家にいてもついサボってしまうので、テスト前の二週間くらいは放課後図書館で勉強することにしている。
今日もいつもと同じように図書館へ向かおうとしていると、玄関で宮くんたち双子に会った。
彼らはこれから部活らしく、図書館棟と体育館は近いので途中まで一緒に行くことになった。
「名字さんはなんで図書館に行かはるん?」
「試験勉強やよ。私、推薦狙いやからテスト頑張らないとなん。」
「「えっ、テスト!?」」
「…来月の頭期末やろ?」
「サム…アカン…勉強全然しとらへん…」
「ツム…お前もか…」
二人して顔を真っ青にしているのをみると、どうやら宮くんたちは頭があまりよろしくないらしい。
確か赤点を取ると夏休み中補講が入ったはずで、運動部は合宿に参加できなくなる。
「名字さん推薦狙いってことは頭ええよな!?」
「なんやサムしらんのか!名字さんは毎回学年で5本の指に入っとんのやで!」
「なんでツムがドヤ顔してんねん!」
「別にしてませんけどお!?」
「ってかそないなことはどうでもええねん!頼む、名字さん!俺に勉強教えたってくれ!!」
「クソサムふざけんなや!お前なんか一人で勉強してればええやろ!名字さんは俺に教えてくれるんや!」
私の口の挟む隙を与えず喧嘩をしだす宮くんたちに困っていると、凛とした声が響く。
「侑、治、お前ら喧しいで。周りの迷惑になっとんの見えんのか。」
その声に二人はピシッとし、急いで声のした方を振り向いて背筋を伸ばし「「すいませんでした!!」」と頭を下げた。
いつもの二人とは違った様子に驚いていると、声の主であるバレー部主将の北さんがこちらを見て「すまんな」と謝ってくれた。
「自分、推薦なん?」北さんの言葉に頷くと「さっきの話聞いとったんやけど、この二人に勉強教えてくれはるん?」と聞かれ、じっと顔を見られる。
人に教えると自分の復習にもなるしなと思い再度頷けば「そら助かるなあ。こいつらこんなやけどバレーはめっちゃすごいねん。合宿出られんくなると困るからなあ」と微笑んだ。
「北さんて笑うんや!」などと言う双子を見つめ「自分らこの人に迷惑かけたらあかんで。頼むならしっかり頼み」とビシッと言ってくれた。
二人は再度背筋を伸ばし私の方を向き、「「テスト勉強教えてください!」」と勢いよく頭を下げてきた。
「ええよ」そう私が応えれば「これで赤点回避や〜」「よっしゃ今日も部活がんばるで〜」とさっさと体育館へと走って行った。
それをどこかで見ていたらしい角名くんに「俺も勉強一緒にしていい?」とLINEで言われ、先程の二人を思い返し自分だけでは手にあまるなと思いOKのスタンプを送っておいた。
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