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徹が高校を卒業したらアルゼンチンに行くと聞いた。

小さい頃からの幼馴染がその決断をしたことに多少驚きはしたが、長いこと一緒にいるからこそ何故アルゼンチンなのかがわかるからやっとか、という思いだった。

徹にとって日本にいるよりも優先すべきことがあって、それがバレーボールだというだけだ。

本人から聞いた時は随分遠くに行くのだなと寂しい気持ちもあったけれど応援したい気持ちの方が勝って「がんばってね」と笑って伝えた。

だから一に「お前及川がアルゼンチンに行くのに何も言わなくていいのかよ」と言われた時に本当に驚いた。

「え、何を言うの?」

「お前及川のこと…その、好きなんだろ?」

「え?」

随分と間抜けな声が出たと思う。

だって自分の想い人に徹のことが好きって思われてるなんて思わないじゃないか。

「遠くに行くから言いにくいのかもしんねぇけど、言わねぇと後悔するぞ」

「え、待って待って」

「及川もお前のことよく気にしてるしよ」

徹が私のことを気にかけてくれているのはこの鈍感男である一との恋を相談しているからで、断じて徹が私に気があるわけではない。

どこから否定したらいいのかわからなくてストップをかけたのに、一が次にした言葉は私の恋に終わりを告げた。

「お前と及川、お似合いだと思うから頑張ってこいよ」

私が好きなのは一だよ、そう言えればよかったのに。



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