09
知らん男と去っていった名前が行った先には当時のクラスメイトたちがおった。
ってことはさっきの男はクラスメイトで、仲ええんやろかと見ていたら肩に乗った手は振り払われていた。
名前も積もる話もあるやろと、ひとまず俺もこのパーティーを楽しむことにした。
「侑くん!」
声をかけられた相手は名前の友だちやった。
「久しぶりやね」
「せやな、名前にはもう会った?」
「さっき見かけたんやけど他の男にとられた」
「もしかして引きずってたりするん?」
「十年間片想いや」
「名前愛されとんなあ…」
意外だと言わんばかりのその顔に「俺ってそんなチャラそうに見えるん?」と聞けば「一途には見えへんな」と正直に言われた。
彼女はお詫びだと言って今名前には彼氏がいないことを教えてくれた。
「高三の時なんでフられたんかわからへんのや…」
「それは本人に聞いた方がええやつやな」
ほら、と言って彼女が指さした先にはサムと仲良く楽しそうに話してる名前がおった。
「あいつ何しとんねん!!」
彼女にありがとなと声をかけ、サムの元へと足早に向かった。
「サム!!!名前になにしとんねん!」
「お前が見つけられるように近くにおったんやろアホ」
サムは掴んだ手を払い除けて、面倒くさそうに俺へため息をつき、名前へ「お役目御免や。今度店来てな」と声をかけて去っていった。
「サムと何話とったんや」
「別に侑くんには関係あらへんやろ」
「好きな子が他の男と話とったら気になるやろ!」
「げっ、治くんの言っとったの本当やったん?」
「は?サムまじで何言うたんや」
「なんでもありませ〜ん」
久しぶりに話したのに、高校の時と変わらない話し方をする名前にひどく安堵して、やっぱり諦めるなんかできへんなと思った。
「なんであんな別れ方したん」
そう切り出せば名前は嫌そうな顔をして「今聞く?」と言った。
「聞かなこたえてくれへんやん」
「遠恋なんか無理やっていうたやろ」
「ほな今なら付き合えるん?」
「彼氏おるから無理」
「おらんって聞いとるで」
「誰や言うたの!ってか目立つんで絡まないでもらってええですか」
「話逸らさんでもらってええですか」
ああ言えばこう言う名前に痺れを切らして「ずっと好きなんやけど」と小さい声で言えば「諦め悪いなあ」と呆れた顔をされた。
「忘れられへんのやもん」
「忘れてくれてええよ」
「忘れられへんって言うとるやろ!」
「侑くんのこと好きな子なんて仰山おるやろ」
「俺が好きな子が名前しかおらへんのやから仕方ないやん」
お互い呆れた顔で一瞬だけ目を合わせ、次の瞬間に大声で笑った。
「そのしつこさに免じて付き合うてあげてもええよ」
「もう離しとうないからこのまま結婚でもええ?」
「それも悪くないなあ」
その瞬間、周りの人たちから大きな拍手をされた。
忘れとったけど、同窓会中やった。
角名なんか動画撮っとるやん。
急に恥ずかしくなって「見せ物やないで!」といえば「責任とってもらわなアカンな」と名前が笑った。
格好のつかないプロポーズになってもうたけど、これはこれで俺らしいかと、名前をみてキスをしたら先程よりも大きな声で「おめでとう」が聞こえた。
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