06

お腹もいっぱいになってきて、次は甘いのが食べたいなと思っていると治くんが「名前ちゃん、そろそろ甘いの食べとうない?」と言ってきてくれた。

「デザートは別腹だよね!どれ食べようか?」と聞けば「気になっとんのはシュークリームとジェラートかな〜」と言ったのでガイドブックを開いて目的のお店を探す。

「名前ちゃんはどれが気になる?」と今度は私に聞いてくれたので考えるが困る。
ガイドブックに載っているお店はどれもこれも美味しそうで「全部食べたい…」と呟けば治くんは「ほな全部食べよか!」となんとも心強い言葉をくれた。

私ほどお腹が苦しくないのか行った先々で目的のものだけでなく他のものも購入し「美味いなあ」なんて言いながらペロリと平らげていた。

スイーツも食べて大満足、さて今は何時だろうかと時計を見ると午後3時。
目的の物は大方食べたし、特にこの後やることもない。

治くんを見れば「名前ちゃんはまだ時間大丈夫?」と聞かれたので頷けば、「ならここから近いし水族館でもどうやろか?」と言われる。

お腹もいっぱいで腹ごなしの意味も含めていいかもしれないと思い、私たちは数駅先にある水族館へと向かった。

入り口でチケットを買い、パンフレットを見ればもうすぐイルカショーの時間。
タイミングええなあなんて言って観にいけば夕方の時間も相まってか右も左もカップルだらけ。

私たちもカップルに見えるんだろうかと思案するが、治くんの「イルカめっちゃ飛ぶやん!」
という声にハッとし水槽へと目を戻した。

幸いにして後方の席だったので濡れはしなかったがやはり迫力は前方の席の方があるみたいで治くんは「次来る時は前の方でみような!」と意気込んでいた。

館内は薄暗く、水槽から漏れる光でなんとも幻想的な空間である。
決して空気にのまれたわけではない。
でも、どちらからともなく手を伸ばし、お互いの指の感覚を確かめるように絡めあった。

そのまま館内を回るが、目は水槽をみているのに指先の感覚だけが鋭敏で、全神経がそこに集中しているかのようだった。
出口が見え、お土産屋さんのライトが見えると絡んだ指先は解かれた。

「ぬいぐるみかわええなあ!」と子どもみたいに喜ぶ治くんに「買うの?」と聞けば「俺みたいなガタイのいい男がこんなん抱っこしてたらキショいやろ!勘弁してくれ!」と言うので「可愛いと思うよ?」と返せば「可愛いはいらないんや…」と難しい顔をされた。

何も買わないのも寂しいので、可愛い缶に入ったクッキーを購入する。
治くんは何か買わないのかと見れば「これは可愛いがすぎるな!?」と言ってチンアナゴの形を模したふりかけケースを手にしていた。
ちゃんと二つ買っていたあたり、侑くんにでもあげるのだろう。

会計も終えたので出口へと向かう。
もう外はすっかり日が暮れていて、今日はこれで解散かな?と思った。
誘われた時はどうしようかと思ったが、想像以上に楽しくて今は離れるのが惜しい。

ふと治くんを見れば、真剣な眼差しでこちらを見ていた。
絡むような熱い視線に動けずにいたら、治くんの顔が近づいた。
目を閉じれば唇に柔らかい感触を覚える。

「好きや」

たった一言だったけれど、想いの込められた言葉に私は頷いてもう一度目を閉じた。



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