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「結局なんで別れたん?」

忘れたわけではないらしく、会が終わった後に侑くんは私へそう尋ねた。

「侑くんプロになるし、アナウンサーとかそういう綺麗な人とも関わり持つんやろなと思ったら自信なくなったんや」

投げやりにそう言えば「俺めっちゃ愛されとんな…?」とアホみたいな返事が来て、あの心配は杞憂だったなと当時の自分を嘆いた。

「はいはい、愛しとるからちゃんと責任とってや」

「当たり前やろ、ずっと好きやったんやぞ」

お酒も入って酔っているからなのかやたらとくっついてくる侑くんを「ここ外なんやけど」と引き剥がそうとしたら「照れとんの?」とデレデレの顔でキスをされた。

「なにしとんねん!!!」

思っていた以上に大きな声がでて、周りの人たちの視線がこちらへ向いた。

「あれ、宮侑やない?」

「隣におるの誰?」

そんな声がして真っ青になった。

そうだこいつ日本代表だったじゃないか。

慌てて離れようとするが力が強くて離してもらえない。

「既成事実は作るもんやで」

耳元で囁かれた声は妙に色気を含んでいて、驚いて見上げればもう一度深いキスをされた。

次の日、同窓会の告白と路上のキスが週刊誌にすっぱ抜かれてしばらく“一般女性のAさん”として話題になったのと、記者会見でデレッデレに照れて嬉しそうにする侑くんに私まで照れて、それを一緒に見ていた友人に散々揶揄われたのはいうまでもない話だろう。



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