タイム

いつも真っ直ぐな瞳とか、周りまで元気にしてくれるところとか、ちょっと単純なところとか、全部好き。

目で追いかけるようになったのは些細なきっかけで、私が落ち込んでいる時に「名字ちゃんは笑ってた方が可愛いな!」と言って私にジュースをくれた。

木兎先輩にとっては元気のなかった私に声をかけただけなんだろうけど、私にとっては暗闇の中で見えた光のようだった。

それからずっと片想い。

気持ちを伝えようかと思ったけれど、バレー部のマネージャーである以上私情は持ち込みたくなくて伝えられないでいた。

木兎先輩もあんまり察しのいいタイプではないし、多分この気持ちはバレてないと思う。

この恋が加速したのは先輩たちの最後の試合である春高の決勝戦。

私たち梟谷学園は負けてしまったけれど、木兎先輩はより一層エースとしての意味を理解したように思えた。

今までも格好よかったけれど、エースの風格が備わった木兎先輩はプロになってから本当に目が離せなくなった。

もう昔みたいに後輩先輩として近くにいられないけれど、遠く離れた今もずっとこの想いは消えないでいる。

いつか、どんな形でも伝えられたらいい。


その願いが叶ったのは案外早かった。

木兎先輩が東京で試合があって来ているからひさしぶりにみんなで集まらないかと木葉先輩が提案してきてくれたのだ。

勿論断る理由もないので二つ返事で了承して、当日の服装をどうするか悩んだ。

急な招集だったけれど、久しぶりにみんなで揃って集まることができた。

飲んでる最中に雪絵先輩に「名前は気持ち伝えなくていいの〜?」とにこにこしながら聞かれて、次いつ会えるかわからないしここらで一回気持ちにケリをつけた方がいいのかもしれないと思った。

「伝えるなら協力するよ」

そうかおり先輩も言ってくれたのでお願いして、帰りに木兎先輩と二人きりにしてもらった。

「名字ちゃん久しぶりだなー」

「木兎先輩の活躍いつも見てます!格好いいです!」

「そうだろー!おれはただのエースになったんだ」

ニヤリと笑う木兎先輩に「ただのエースですか?」と聞くと嬉しそうに「普通になったんだ!」と笑っていた。

私には木兎先輩のいう“普通”はよくわからないけれど、多分春高のあの時に何かあったのだろう。

「木兎先輩、私…木兎先輩のこと好きです」

「俺も名字ちゃんのこと好きだぞ?」

「あ、いえ、私の好きはlikeでなくloveでして」

「一緒だな」

「いえ、だから…え?」

今木兎先輩はなんて言ったのだろう。

「名字ちゃんには俺の活躍を一番近くでみてほしいんだ」

「いいんですか?」

「当たり前だ!」

ニカッと笑う木兎先輩の顔は、街灯に照らされてかとても眩しく見えた。



花言葉:あなたの姿に感動する


お題:止められない気持ち



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