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今までは女子に告白されることはあってもあまり恋愛に興味が持てずに全てお断りしていた。

彼女なんて響きはいいけれど自分の生活を制限されるだけだろと穿った見方をしていたのもある。

そんな風に思っていたのも二年までで、三年になって気になる子ができた途端そんな考えは消し飛んだ。

彼女と付き合ってみたい、そう思える子を見つけたのだ。

その子は名字さんといって、同じクラスになったのは初めてだけど試合の度に吹奏楽部として応援してくれているので顔と名前は一致していた。

今までそんなに目立つタイプではなくて、特に気にも留めていなかったのだけど三年になって彼女が吹奏楽部の部長になった途端、曲が変わった。

名字さんは俺たちの士気を上げるために様々な工夫をしてくれた。

主将の侑だけでなく、俺たちにもよく話を聞いてくれてどんなテンポがいいかとか曲は何がいいかとか本当に細かいところまで気が回った。

まあ、前主将の北さんに比べて侑の拘りがすごいのが原因なのもあるだろうけど。

最初は吹奏楽部だからそれくらいやって当たり前だと思っていた侑も名字さんの真摯な態度に「あの子はええな」と珍しく肯定的な意見を言っていた。

他人が気にしているのを見ると気になるのが人の性で、名字さんのことをよく観察するようになった。

文字、女の子らしい丸い文字を書くのかと思いきや随分と大人っぽい綺麗な字を書く。

性格、部長だから北さんみたいなタイプかと思ったけれどお人好しで意外とおっちょこちょい。

ふわふわ笑っているだけに見えるけれど締めるところはきちんと締め、後輩だけでなく同輩からの信頼も厚い。

見れば見るほど惹かれていって、侑が吹奏楽部に顔を出すときは俺も一緒になってこっそりついていった。

侑と話している時の彼女は真剣そのもので、音楽に対してきちんと向き合っているのがわかる。

そんなある日、侑が俺がいることに気づかずに「名字さんって角名のこと好きなん?」と質問した。

それを聞かれた名字さんの顔は真っ赤で、これは好きですと言っているようなもんだろと俺まで恥ずかしくなった。

侑は一言二言名字さんと会話をした後、俺がいることに気づいて顔を真っ青にして「知らんけど」と付け加えていた。

俺としては好きな子が俺のことを好きなのを知れてよかったのだけれど、名字さんがこれを知ったらひっくり返りそうだなと思った。



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