03
それからすぐ徹はアルゼンチンへと旅立って、私と一もそれぞれの進学先へと進んだ。
本当は見送りに行きたかったけれど、徹の方から「名前にはまた会いにくるから、送らなくていいよ」と言われ、最後まで私のことを気遣ってくれたなと少し申し訳なく思った。
見送りの前日に一からLINEが入っていたけれど、既読をつけることはなかった。
何が送られてきたかは知らないし、知ることもない。
入学の準備をしていたらあっという間に春休みはすぎて、私はかねてより希望していた英文科へと進学し、これから始まる新しい生活へと胸を躍らせた。
アルバイトも始めて、交流関係も高校の時よりも大分広がった。
高校の時はあまり派手な格好はしなかったけれど、大学へ入るとそうも言ってられずお化粧の も頑張ったし服装も流行を追ってそれなりに整えた。
「名字って彼氏いんの?」
質問をしてきたのはバイト先の男の子で、シフトがよく被るため話すようになった。
「いないよ〜」
「好きなやつとかは?」
「い、いないよ」
一瞬一の顔がよぎったけれど、急いで頭をふった。
「怪し〜!あ、でもいないならさ、今度友だちと海行くんだけど名字も友だち誘って来ねえ?」
「海?楽しそう!あ、でも泳げるかな…」
そういえば彼は「泳げなくても砂山作って遊ぶのもアリだぜ」とふざけていうのである。
この距離感が楽しくて、誰を誘うかなと早速頭の中で何人か候補をあげた。
徹がアルゼンチンへ行ってからもLINEでのやりとりは相変わらずしていて、今度海へ行くことになったと伝えればすごい速さで『誰と!?』と返ってきた。
『バイト先の友だち』
『男でしょ!』
『よくわかるね』
『男は狼なんだからね!?』
そこから続いた文言はいつの時代を生きているんだと思うくらいの説教で、読むのも面倒になって『楽しんでくるね』と返してアプリを閉じた。
そこから着信が鬼のようにきたけれど全部シカトして寝ることにした。
この時一件だけ一から連絡があったのだが、徹による通知の量に辟易した私が知ることはなかった。
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