04
及川とはあいつがアルゼンチンに行ってからも頻繁に連絡をとっていた。
お互い近くにはいないけれど、今まで会って話してたことがLINEになっただけで距離感はそう変わらなかった。
そんな及川から珍しく電話があって、不思議に思って出ると開口一番「岩ちゃんがもたもたしてるから名前に彼氏ができそうなんだけど!?」とすごい大声で怒られた。
結局名前は及川に気持ちを伝えなかったみたいで、及川はあいつの気持ちを知らないままアルゼンチンへと旅立った。
見送りくらいくるものだと思ったのに前日にLINEをしても既読はつかず、当日名前の姿を見ることはなかった。
その後も何件か他愛無いLINEを送ってはみたものの、名前から返事が来ることはなかった。
あいつにとって俺は及川がいたから一緒にいただけなのかと少し残念に思った。
勝手に親友だと思っていたのも烏滸がましかったのかもしれない。
そんな名前に彼氏ができるかもしれないと及川に言われ、及川への恋心もなくせたのかと思い「へえ、おめでたいな」と返せば「まだ自覚してないわけ?」と冷たい声で返された。
「自覚ってなんだよ」
話が全然読めなくて苛々するのを隠さずにキツい言い方をしたと思う。
でも及川から発せられたのは「名前が好きなのは俺じゃないよ。言い訳ばっかしてないで早く気づいたらどうなの」という呆れにもにた言葉で、俺が考えている間に「じゃあね」と電話は切られた。
久々に聞いた名前の名前に胸がざわついて、何も考えずに名前へと電話をかけるが聞こえてきたのは無機質な機械音声だった。
そういえばこんなに長い間連絡もとらないのは初めてなのではないかと思うと、頭に一抹の不安がよぎった。
もしかして、避けられている?
そう考えると、いくら及川がいないからといって名前は俺に返事をしないなんてことするわけがなかった。
もしかてではなく、確実に避けられていることに気づいて真っ青になった。
及川に名前がフラれても俺と名前の関係は幼馴染のまま変わらないと思っていたのに、蓋を開けてみたら名前が好きなのは及川じゃないと言われるし、俺は名前に避けられているしで、どうしてそうなってしまったのだろう。
ずっと隣にいてくれればいいと思っていたけれど、それは幼馴染としてだったのか?
この先名前が誰かと結婚したら俺が隣にいる権利なんかひとつもないのに。
行き着いた結論は一つで、これは幼馴染への気持ちなんかじゃなかった。
俺は名前のことを一人の女の子としてずっと好きだったのだ。
連絡が取れなくなってから気付いた想いに、今までの俺のバカな行動をブン殴りたくなった。
及川に告白しろ?
名前に彼氏ができたらめでたい?
バカなこと言ってんじゃねぇよ。
あいつの隣にいるのは俺じゃなきゃ嫌に決まってるだろ。
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