03
そうは言っても吹奏楽部には有名な決まりがあるし、付き合うとかそういうことは考えていなかった。
俺も春高までバレー部は続けるつもりだし、向こうも辞めるつもりはないだろう。
両想いなのがわかっていれば規則を破ることなく所謂“両片想い”の状態をキープしておけばいい。
そうと決まれば周りから見てただのクラスメイトのこの状態をどうにかしないといけない。
フィルターがかかっているのは否めないけれど名字さんは可愛い。
この間だって他のクラスの男子が話しているのを聞いた。
どうやって仲良くなろうかと考えていた時、たまたま日直で一緒になった。
「角名くん、今日よろしくね」
下を向きながら照れていうその様はどう考えても俺のことが好きで、今までよく隠してたなと思った。
周りからみてイチャついてるように見せるには手っ取り早くこの照れた顔をみんなに見せつければいい。
授業の合間の休み時間、黒板を消すときに届かなくて困ってる名字さんの後ろに回ってわざわざ名字さんの持っている黒板消しを手に取り「代わるよ」と笑うと当然名字さんは顔を赤くして照れた。
休み時間の度にそんなことしてたら周りもなんとなく雰囲気を察してくれて、昼休みにはチラホラと「角名くんと名字さんって付き合っとるん?」なんて聞かれるようになった。
勿論付き合っていないので肯定はせず「決まりがあるからね…」とさもお互い好きなんだけど感を出して濁す。
この噂が名字さんのことを可愛いと言っていたやつらに届けばいい。
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