05
そうは言ったもののLINEは未読スルー、電話には出ない、頼みの及川はアルゼンチンと八方塞がりで特に何もできないまま一年が過ぎた。
あの時及川は名前に彼氏ができるかもと言っていたし、もしかしたらもういるのかもしれない。
それでも自覚した気持ちは止めることはできなくてあいつの隣に誰かいることを想像するだけで吐き気がした。
今まで関係を保てていたのは名前の努力あってのものなのだと痛いくらいにわからされた。
そして大学二年生になって空井さんのところへ会いに行った後の公園で名前をみた。
海外だしまさかいるはずないと思ったけれど、あの顔は絶対に名前で、やっと見つけた姿に一目散に走った。
「名前!!!」
腕を掴んでそう叫べば心底驚いた顔をした名前がいた。
「え、一!?なんで…ここアーバインだよ?嘘…夢…?」
ぱちぱちと瞬きをする名前に「夢でも幻でもねぇよ」と言えば「なんでここにいるの?」と聞かれた。
「あー、弟子入りしたい人がいて会いに来た」
「前言ってた人?」
「よく覚えてんな」
「一のことだからね」
そう言ったあと名前はしまったという顔をして「いや、ほら、私記憶力いいから!」と誤魔化した。
「なあ、お前彼氏いんの?」
「え、なにそれまだ徹のこと言うの?」
「いや、及川は関係ねぇ」
「じゃあなに?」
「俺がお前のこと好きだから気になった」
名前の目がみるみる丸くなって、言われた言葉を理解した瞬間茹でだこみたいに真っ赤になった。
「え!?」
「伝えんの遅くなったけど、彼氏がいねぇなら俺と付き合ってくれ」
「嘘でしょ…?」
呟かれた言葉は俺に言うというより独り言で、名前の目からは大粒の涙が溢れた。
「嘘でこんなこと言わねーよ」
返事は?と聞けば名前は大きく頷いてくれた。
「にしても仙台で会えねーのにこんなとこで会えるとはなあ」
「運命ってやつじゃないの?」
「避けてたやつが言う台詞じゃねえな」
「いいじゃん、別に」
嬉しそうに笑う名前をみて、柄にもなく運命でもいいかもしれないと思った。
「あ、及川に写真送ろうぜ」
「いいね、徹びっくりするかな?」
パシャリと音がして撮れた写真は、先程のウシワカと撮ったものよりも上手に撮れていた。
「自撮り上手いな」
「そ?普通だと思うけど」
そう言われてさっきの写真を見せれば名前にお腹を抱えて笑われた。
「なにこれ!!下手くそなの!?」
多分及川もこういう反応をしてるだろうなと思って、心の中で蹴飛ばしておいた。
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