04
角名くんと日直が一緒になった。
日直という大義名分があれば角名くんと喋ることだってできる。
「角名くん、よろしくね」
話すのはちょっと緊張するけど、今日一日関われると思うと天にも昇る心地だ。
とはいえ日直は日直だから、なるべく角名くんに迷惑がかからないように率先してやろう。
普段の様子を見ているとあんまりこういうの好きそうじゃないし。
早速黒板を消そうと黒板消しを持って端から消していたら、私の身長じゃ上の方が届かなくて跳ねていると、後ろから黒板消しを手に取られて角名くんが「代わるよ」と声をかけてくれた。
あまりの近さに顔が赤くなるのを抑えられなくて、下を向いたままありがとうとお礼を言った。
びっくりしたことにその後も角名くんは毎時間消すのを手伝ってくれて、その度に私へ話しかけてくれた。
いつもは何を考えているのかちょっとわからない感じだけれど、今日話すときはすごく優しそうな目をしていてドキドキが止まらなかった。
昼休みになっていつものように友人と中庭でご飯を食べていたら「名前って角名と付き合うてるん?」ととんでもないことを聞かれた。
「私吹奏楽部だからありえへんよ」
「今日なんかええ感じやったやん」
「角名くん優しいから手伝ってくれとっただけだよ」
側から見てもいい感じに見えたのかと嬉しさが抑えられなかったけれど、決まりがあるのもあるし、なにより角名くんが私のことを好きになる理由が見つからない。
「でも名前は好きなんやろ?」
楽しそうに笑う友人に「内緒やけどな」と笑って返せば「応援しとるで」と親指を立ててくれた。
春高が終われば吹奏楽部も引退の時期だし、気持ちを伝えてもいいのかもしれないと思った。
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