02

今日もまた作ったクッキーを袋に入れて昼休みに中庭へと向かうと、道すがら私の後ろをみてコソコソと話す人をよくみかけた。

不思議に思って振り返れば、二年生の宮治先輩が真後ろにいた。
どうやら先程からの周りの視線はこの人が原因で、ずっと私の後ろをついていたらしい。

「なあ、それからええ匂いするけど」

私の持っている袋を指さし、今にもよだれが垂れそうな口元と期待に満ち溢れた瞳で見つめられた。

「クッキーです」

「自分の?」

「そうですね」

「ええなあ、クッキー…お腹すいとんねん」

あげないと恨まれそうだな、と思った。

「手作りが大丈夫でしたら差し上げますけど…」

「ええの!?」

「まあ、はい」

私の返事を聞くなり袋を私から取り、あっという間にクッキーを口へと放り込んだ。

「美味いな!!」

幸せそうに食べる先輩をみて、こんな風に食べてくれるならあげてよかったなと思った。

そこからどこで私のクラスを知ったのか、先輩は昼休みになると顔を出すようになった。

「昨日はありがとうな!今日はもってへんの?」

ニコニコ笑いながら言っているけど、先輩が後輩に強請るのはどうなんだと思う。

「ありますけど…」

「ん!」

差し出された手に袋をのせれば、嬉しそうに開けて「今日はマフィンや!」と喜ぶ。
一つ取り出して口に頬張り、そのまま先輩は私のクラスを去っていった。

友人に「餌付けでもしとるん?」と聞かれたけど「さあ…」としかこたえることはできなかった。



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