06
次の日から名字さんは俺のことをよく見てくるようになった。
最初はあんなことをしたから恨まれてるのかと思って目を合わせないようにしていたけれど、ちょっと見てみたら瞳に映る色はそんな禍々しいものではなく、ただただ色欲に塗れていた。
これはと思って呼び出せば、縋るように迫られ我慢できずに手を出した。
触れたところは熱を持ち、キスをすれば向こうから舌を絡めてくる。
唇を離す時に一瞬見える物欲しそうな顔にもう一度キスをすれば甘い声が唇から漏れる。
全身で俺を欲するその様に、どんどん溺れていった。
もっと、もっと俺のことだけを見ていてほしい。
そんな感情が自分にもあるのだと驚いた。
執着などとは無縁だと思っていたのに。
でもその感情を自覚した時にはもう遅くて、彼女とは純粋なお付き合いができる状態ではなかった。
完全に自業自得なのだけれど、このままではどちらのためにもならないと距離を置くことを決めた。
今でも思う、あの時あんな始まり方をしなければ名字さんと彼氏彼女の関係になれていたのだろうかと。
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