05
放課後、日直の仕事で名字さんと二人で教室に残ることになって、またとない機会に少しだけ浮かれたのが悪かった。
それは名字さんが日誌を書いていた時だった。
「何か俺もやることある?」
「角名くん部活あるやろ?行ってもええよ」
「それをいうなら名字さんだってあるじゃん」
「まあ、そうなんやけど」
「俺もなんかやるよ」
「ほなここ書いてもらってもええ?」
名字さんが指を差したのは“今日の感想”のところで「わかった」と了承しようとしたら、名字さんの感想のところに『角名くんとやれて楽しかったです』と書かれていて思わず「これ…」と名字さんの方を向いてしまった。
名字さんはしまったという顔をして、少し潤んだ瞳で俺の方を見て「角名くん…」と情けない声で俺の名前を呼んだのだ。
好きな子にそんな顔で見られたのがいけなかった。
体が勝手に動いて、名字さんの唇に俺のを重ねてしまった。
本当に一瞬だったけれど、確かに感じた柔らかさにハッと我に返って「あ、じゃあこれ書いておくから名字さんは部活いってきたら?」と慌てて言えば、名字さんは「あ!そうやね!行ってくるね!」なんて言って鞄に荷物を投げ入れて一目散に教室を出て行った。
やってしまったと反省しても後悔先に立たず。
次の日から名字さんは俺のことを避けるようになった。
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