紫陽花
「えっ、治免許取ったん!?」
「荷物運んだりすんのに必要でなあ」
「せやったら、私のことドライブデートに連れてってや!」
そんな約束をしたのが半年ほど前。
その時は「免許取り立てやぞ!?助手席乗ろうとか死ぬ気か!?」と全力で拒否られた。
なんや彼氏の車の助手席に乗るの夢やったんになあと思ったけれど、確かに取ったばっかの人間の隣に座るのは嫌かもしれないと考えを改めた。
しかし、やっぱり運転席の彼氏の顔を眺めたりとか、バックする時に手を助手席のヘッドレストに当てたりとか、そういう乙女の夢はなくならない。
私の可愛い車に乗って初めてのドライブデートなんて彼氏感あって最高じゃないかと思い、治が運転に慣れるのをひたすら待った。
ところがだ、ところが。
「明日北さんとこで新米の試食会あるから名前も行くか?」
「え、行く〜!北先輩と会うの久々やし楽しみやなあ!」
何も考えとらんかった私が悪いんだと思う。
当日治の店で待ち合わせしたらまさかの軽トラックで北先輩のところまで向かうことになり、図らずとも初めてのドライブデートになってしまったのである。
「こ、こんなん嫌や〜!!!」
途中で気づいて叫べば「今度レンタカーでも借りたるからちょっと黙れや」と言われる。
「ちゃうねん!!初めてのドライブデートってのが大事やねん!!なんでこんな業務的な感じなん!?乙女の夢踏み躙らんとって!!」
「仕方ないやろ、北さんとこから米もらってこなアカンのやから。普通の車じゃトランク足りないねん」
「私だけ現地集合でよかったやん!!なんで乗せてくんや!!」
「ワガママ言うなや!!もう遅いわアホ!!」
いくらなんでも軽トラックはない!
いや、別に軽トラックが悪いわけではない。
お店をやっている以上荷物の運搬はあるし、こんな便利な乗り物そうないだろう。
でも!初めてのドライブデートを楽しみに半年も待ったのに軽トラック!!
もっとこう夜景を見に行こうとか、そういうのをやってほしかったのに!!
「治のアホ〜!!」
私の叫び声は北先輩の家まで聞こえたらしく「名前はそこで叫んだからって過去にでも戻れるつもりでいるんか?」と着いた早々正論パンチを喰らい、その後泣きべそをかきながらご飯を頬張った。
花言葉:無情
お題:ドライブデート
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