07

それからは散々だった。

気晴らしに適当な女とヤろうとすれば名字さんの姿が脳裏にチラついて、現実との落差に思いっきりため息をついた。

何をするにしても名字さんの顔が離れなくて女遊びもピタリとやめた。
バレーをやっている時だけ彼女のことを忘れることができた。

ツムには「最後の一年やからやる気になったんやな」と褒められたけれど決してそんな気持ちではなかった。

勿論余計なものがなくなった分打ち込めはしたのだけれど、あの時撮った写真をみては欲を吐き出す毎日でそんな自分に嫌気がさした。

一旦切れた関係は簡単には戻らなくて、三年生にもなればみんな受験で忙しくて最早繋がる手立てなんてひとつもなかった。

そのまま何もできないまま卒業式を迎えて、ずっと甘くて苦い気持ちを忘れられないまま大人になった。

そう、ずっと忘れられなかったからこそ一目見ただけで彼女だとわかった。

昔に比べて明るくなった髪色、大人の女性を思わせる化粧、品のいい服。
綺麗になった彼女をみて、一瞬息をするのを忘れた。

でもどれをとっても彼女をより綺麗に見せるための装飾品でしかなかった。
俺が見たいのはそんな着飾った名字さんではない。
あの時の欲望のままに自分を曝け出していた名字さんなのだ。

隙を見て話しかけようと思ったが、その日に限ってものすごく忙しくて話す暇がなかった。
ふと見れば名字さんは最後の一口を口に入れて、席を立ち店を出ようとしていた。

向こうは俺をみてどう思ったのだろうか。

嫌な思い出として刻まれていたらこの店にはもう二度ときてくれないだろう。
絶対にこの機会を逃してなるものかと店を出る彼女の手を取った。

今の自分はあの時の自分とは違う。
絶対に大事にできるから、頼むからもう一回だけやり直させてほしい。

「今日仕事終わったらもう一度ここへ来たって」

驚く彼女に「頼むから」とお願いすれば「わかった」と難しい顔で返された。



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