06
あの日、なんで角名くんが私にキスをしたのかわからなかった。
聞こうとおもったけれど、なんて聞けばいいのかわからなくて顔も合わせられない日が続いた。
「なー、角名と喧嘩でもしたん?」
侑くんにそう聞かれたのは一週間くらい経った時で、久々に聞く角名くんの名前に思わず動揺した。
「な、なんの話?」
「隠さんでもええやん。この間ええ感じやって噂流れとったのに最近名字さん角名と目も合わせへんって聞いたで?」
一体誰に聞いたのかしらないけれど、侑くんはニヤニヤしながら私へと聞いた。
「なんもあらへんよ」
「告白されたとか?」
「角名くんが私にするわけないやろ」
「ほな名字さんがした?」
「決まりもあるししません」
「んー…キスされたとかはどや?」
侑くんの言葉に唇に当たった柔らかい感触が甦った。
「うわ、当たりか」
「ちゃ、ちゃうねん!」
「いや、その反応当たりやろ」
マジか〜なんて言う侑くんに必死に言い訳を考えるけれど、なんて説明していいのかもわからず「言わんどいて!」と泣きそうになりながら訴えたら「俺に任せとけ!」と不安になる言葉を残していった。
そんな侑くんから昼休みにLINEがあった。
『すまんけど曲のことで話したいから資料室に来てもらってもええ?』
いつもなら教室で話すのにわざわざ資料室とは珍しいなと行ったら、資料室の前で侑くんが待っていた。
「どしたん?」
「ちょっと俺用事あるから先入っといてもらってもええ?」
「わかった…」
呼び出しといて用事あるってなんだろと思ってしばらく座っていたら、侑くんが待たせたなと声をかけてくれた。
やっと来たと思って見れば扉のところにいたのは侑くんじゃなくて角名くんで、私に気づいた角名くんが「え、侑なにこれ」と振り返ったらガチャンという音と共に扉がしまった。
閉じ込められた!しかも角名くんと!
気まずすぎるこの空間に、侑くんが早く鍵を開けてくれますようにと願うしかなかった。
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