07

気まずい空気が私たちの間を流れる。

「あー、えっと、名字さんは侑に呼び出されたの?」

先に口を開いたのは角名くんだった。

「曲のことで相談があるって言われたんやけど、この感じからすると嘘やったわ…騙された…」

「オッホホ、名字さん単純そうだもんね」

なかなか失礼なことを言ってくれる角名くんに「いやいや、角名くんも騙されとるやん」とつっこめば「俺は無理矢理連れてこられたから騙されてはいないよ」ともう一度特徴のある笑い声を出した。

少しの沈黙の後、角名くんは申し訳なさそうに私の方を見た。

「この間、ごめんね。嫌だったよね」

「あっ、え、いや…驚いた…けど」

「けど?」

「嫌ではなかったです」

何恥ずかしいこと言ってるんだと思い俯けば「嫌じゃなかったんだ」と繰り返される。

「そ、そんな何回も言わんどいて!」

「顔真っ赤だ」

「揶揄わんといて!!」

「揶揄ってないよ」

「揶揄ってへんの…?」

角名くんの顔をみれば、いつも冷静沈着な角名くんが珍しく照れた顔をしていた。

「俺、名字さんのこと好きだから」

「好き…?」

「そう、この間あんまりにも可愛い顔してたからついしちゃった」

「可愛い顔!?」

角名くんの言葉に私の顔は湯気が出るんじゃないかってくらい赤くなっていると思う。

「ほら、今も可愛い顔してる」

そう言うと角名くんの顔が近づいてきた。

キスされる…。

自然と目を閉じ、唇に触れる温もりに鼓動が速くなる。

触れたのはほんの少しだったけれど、私にはとても長い時間のように感じた。

「規則があるから付き合えないけど、引退したら俺の彼女になってくれる?」

こたえなんてもうわかってるはずなのに、わざわざ聞いてくる角名くんは少し意地悪そうな顔をしていて、恥ずかしくなって「どうやろな」と誤魔化せば「侑に俺のこと好きって言ってたの聞いてたんだ」と言われた。

「嘘ォ!?」

「ほんと。侑最後謝ってたでしょ?」

「穴があったら入りたい…!」

「まあでもほら、両想いだからいいじゃない」

そう言うと角名くんはまた特徴的な笑い声をあげた。

「そろそろ昼休みも終わるから侑も戻ってくるかな」

「そ、そうだね」

「さっきの約束忘れないでね」

その言葉に頷けば、角名くんは満足そうに笑った。



花:プリムラ
花言葉:青春の恋
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