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母に「あんた最近前にも増してお菓子作るようになったなあ」と言われた。

「貰い手ができたんや」

「回数作ってるせいか味も美味しくなっとるけど、ほんまに製菓の専門目指さないん?」

母がそういうのも納得で、ここ最近自分でもめきめきと上達しているのがわかる。

今まで自分の趣味で作ってきたものが、人のために作るようになったら見た目にも味にもこだわりたくなって、大分手が込んだものを作っている。

面倒くさくて手を出さなかったアイシングもやるようになったし、一つ一つの作業をより丁寧に行うようになった。

しかし問題が一つあって、作る回数が増えた分お小遣いの減りが顕著なのである。

「もしほんまに製菓の専門目指すなら普段のお菓子代、お母さんが負担したってもええで」

母の提案は魅力的で、お菓子作りに楽しさを見出した今は本気で目指してもいいと思うようになっている。

しかし、今のモチベーションを保てているのは先輩が嬉しそうに私のお菓子をもらってくれているからで、それがいつまで続くのかはわからない。

「目指したいけど…モチベ保てる自信ないんよねえ…」

そう零せば「あら、もしかして好きな人にでもあげてたん?」と驚いた声を出された。

“好きな人”。
その言葉があまりにも今の私にピッタリはまって顔が熱くなるのを感じた。

「ま、そういう乙女な事情ならお母さんも手伝ってあげよかな」

大声で笑った母に「ありがと」と言えば「上手くいくとええな」と背中を叩かれた。



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