シャムサクララン

今日は朝からついていなかった。

かけたはずのアラームは何故かOFFになっていて寝坊するし、歯を磨くときに間違えて洗顔料をつけて死ぬほどうがいをした。
しかもその時に使った洗顔料が最後で顔を洗うのに泣く泣く手洗い用の石鹸を使った。

踏んだり蹴ったりだと嘆いて家を出れば、忘れ物をしてもう一度戻る羽目になった。
Tシャツなら誰かに借りればいいだけなのに、よりによってシューズを忘れるというどうにもならないもので朝から全力疾走した。

そしたら角で大型犬とぶつかりそうになって思いっきり吠えられた。
それを避けようと後ろに下がったら昨日降った雨でできた水溜りに飛び込んでしまい、制服のズボンは泥だらけ。

学校へついて練習にでたら狂犬ちゃんのサーブが後頭部にぶつかってすごく痛い思いをしたし、あまりの悲惨さに癒しを求めて彼女の名前にスマホで連絡を取ろうと試みたら充電が上手くされていなかったのか電池切れ。

昼休憩にマッキーからシュークリームをもらって食べたら最近発売したロシアンルーレットシュークリームとかいうとんでもない代物で、まさかの一発大当たり。
ものすごく辛いそれに泣きながら飲み物を口に流し込んだ。
マッキーからは「じゃあ後は大丈夫だな。サンキュー」なんて言われたけど、全然嬉しくない!

しかも外で休んでたら水道で遊んでたサッカー部のやつらに水を頭からぶっかけられた。
おかげでTシャツからなにからずぶ濡れ。

今日は俺の誕生日なのに誰一人としてお祝いしてくれないし、なによりもう夏休みだから名前と学校で会うこともできない。
部活が終わるのは遅いから厳しいだろうし、本当になんて誕生日なんだろう。

濡れた服を着替えようと部室の扉へ手をかけ開けた時だった。

大きな破裂音と共に顔に無数の何かがかかった。

「「「ハッピーバースデー!及川!!」」」

顔にかかったものを退けると、目の前にはケーキを持った名前とバレー部のみんながいた。

さっき顔にかかったのは岩ちゃんが構えてる巨大クラッカーで、どうやら俺の誕生日のサプライズパーティーみたいだ。

「え、嘘ォ…みんな忘れてるのかと思った…」

そう呟けば「サプライズ成功だな!」と岩ちゃんが言って、みんなが嬉しそうに笑った。

「ってかなんで名前までいるの?」

「みんなでサプライズパーティーするって言うから参加させてもらっちゃった!」

驚いた?なんて笑う名前に抱きつこうとしたら「早くケーキ食おうぜ」とマッキーに邪魔された。

今日は本当に散々だったけど、みんなのおかげで幸せな気持ちになれた。

「今年も顔面ケーキやられるかと思ったけどそんな酷いこと毎年しないよね!」

「それは別に用意してある」

岩ちゃんの言葉にギョッとして振り向けば、どこから用意したのかもう一つのケーキが俺の顔面へと直撃した。

「なんで!?」

俺の叫びは悲しいことにみんなの笑い声でかき消された。



花言葉:幸福の訪れ


ハッピーバースデー!及川さん!!



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