花言葉

「異性からバラを贈ってもらうのってベタだけどめっちゃときめかない?」

急に振られた話題に思わず「は?ナニソレ」と変な声が出た。

「なんかバラって恋愛映画とかでよく贈られるじゃん?昔はそんなのみて寒〜って思ってたけど、今思うと花に想いをのせて贈るって結構アリなんじゃないかなって思って」

「もらった後困んねぇの?」

「あー、そりゃあんまりにも本数多かったらこれどこに飾るんだよってなるけどさ。でもスッと差し出されたらやっぱいいな〜って思うよ?」

「まずは彼氏作るとこからじゃね」

「それな〜」

スカートなのに足を広げて椅子に座る名字は俺のクラスメイトで、名字の話しやすいキャラのおかげか今じゃすっかり仲の良いお友達だ。

今だって先生が部活の引率でいなくて自習になった数学の時間に、わざわざ席の離れた俺のところへと遊びにきている。

「黒尾はさ、彼女にバラとか贈る?」

「ブッヒャッヒャッヒャ、お前は俺になに求めてんの!?」

「だって黒尾って見た目はイケメンだからちゃんとした格好したら似合いそうじゃん。ね、どう?贈ったりしないの?」

「彼女が欲しいって言ったら贈るかもな」

「えー、超羨ましい!いいな彼女!!」

「彼女なんていないんですけどネ」

知ってる〜と笑う名字に「失礼だな」とデコピンを食らわせれば少し赤くなったおでこを押さえて「酷〜い」と頬を膨らませた。

「ねー、私が彼女になったらさ、バラ贈ってくれる?」

「お前バラのためだけに俺と付き合うの?」

呆れて名字の顔を見たら、いつもみたいにふざけた顔じゃなくてほんの少しだけ泣きそうな顔をしていた。

でもそんな顔も一瞬で消え去って、いつもの笑った顔で「なんてね!黒尾が彼女いなくて寂しそうだったから言ってみただけ!」と誤魔化された。

「ほら、アホなこと言ってないでプリントやんねえと提出間に合わなくなるぞ」

なんて返せばいいかわからなくてプリントを理由に名字に自分の席へ戻るように促すと「はーい」なんて間の抜けた返事をされた。

名字の位置から俺の顔が見えなくなったのを確認した後、先ほどのやりとりをゆっくりと思い起こす。

あんな真剣な顔の名字は初めて見た。

ずっと仲の良い友達だと思っていたけれど向こうはそうでもなかったのか?

一回意識しだすと今までのあいつの仕草も急にそう思えてきて、俺が恋に落ちるまでそんなに時間はかからなかった。

告白をどうするかは決まっている。

本人が望んでいたんだから、12本のバラを手に持ち彼女へと差し出すんだ。

「俺と付き合ってください」



お題:バラ



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